10月15日からタラオカントリークラブ 西コース(7411ヤード・パー70)で開幕を目前に控えた日本オープンの練習場。選手たちは極限のプレッシャーの中、己の感覚と静かに向き合っている。試合直前、スウィングや球筋のわずかなズレをプロフェッショナルたちはどのようにアジャストしていくのか。大舞台へのティーオフを控えた小平智と清水大成、二人の生々しい言葉から、その孤独で緻密な「調整プロセス」を紐解く。

地道な消去法で「正しいピース」を削り出す小平智

画像: 朝の雨の影響もあり、初日前日の水曜は黙々と練習場で自身の体と球筋の調整を行っていた小平智(写真/山口哲平)

朝の雨の影響もあり、初日前日の水曜は黙々と練習場で自身の体と球筋の調整を行っていた小平智(写真/山口哲平)

練習場で長時間の調整を終えた小平智は、「今日良くなりました」と静かな手応えを口にした。

彼が直面していたのは、理想とする体の動きと、実際の球筋とのギャップである。

「自分が思っている動きはできているんですけど、その動きは自分に合う動きじゃなかったんです」

理想の動きが、必ずしも最適な結果を生むとは限らない。この繊細なズレに気づくのは、「ラウンドしていて、球のイメージと自分が動いている動きが合っていない時」だという。

小平の調整プロセスは、極めて地道な消去法だ。

「これをやって失敗だったからこっちをやって、まあこれが合っている、というのが分かった感じです」

試行錯誤の中で「合わない動き」を一つずつ捨て去ることで、自分にとっての正解となるピースを削り出していく。2013年「日本ゴルフツアー選手権」、2015年「日本オープン」、2018年「ゴルフ日本シリーズJTカップ」と日本タイトル通算3勝を誇る小平。飛ばし屋有利とされる長大なコースに対し、過去に幾度もメジャーを制してきた技と精度、そして経験を生かすスウィングアジャストを着実に完成させた。

迷いの末に辿り着いた「フェード」——清水大成が挑むリベンジ

画像: パッティングにも余念のない清水大成(写真/山口哲平)

パッティングにも余念のない清水大成(写真/山口哲平)

一方、清水大成は自身の“持ち球”そのものに対する迷いの中にいた。

「自分の軸になる球がなかったというか、持ち球も分からないし。今週はドローなのかなとか、フェードなのかなとか、いまいち分からなくて」

試合を直前に控えてなお、ベースとなる球筋が定まらないという赤裸々な告白。彼もまた、さまざまな球筋を試しながら己の感覚を探り続けた。そして辿り着いた決着は、「フェードで落ち着きましたね」というものだった。ドロー打ちなどを試す中で、スウィングと自分のやりたいこと、そして実際の球筋がピタリと合致したのだ。

清水にとって、今年の日本オープンは、苦い記憶を払拭する場でもある。日光CCで開催された昨年の日本オープン。3日目が終わった段階で2位に4打差のリード。誰もが「今年は清水大成が勝つ」と思ったほどだ。しかし最終日、あれほど調子が良かったショットもパットも影を潜め、2バーディ、3ボギー、3ダブルボギーの「77(7オーバー)」とし、通算1アンダーの4位タイで終戦。「あれがあるから、今年リベンジできたらいいなと思います」と、静かに闘志を燃やしている。

アプローチは違えど、小平智は「消去法」によって、清水大成は「持ち球探しの試行錯誤」によって、ともに試合直前の土壇場で『スウィングと球筋の一致』という一つの答えに辿り着いた。

今大会の舞台となるタラオカントリークラブ 西コースは、通常営業時のパー5(10番・524ヤードなど)がパー4へ変更され、実質的にロング〜ミドルアイアンでの精密なショット制御(フェードで止める、ラインに出す)が要求されるタフなセッティングだ。

バンカーや池の配置から小平自らが「完全に飛ばし屋有利なコース。でも飛ばし屋が必ずしも優勝するわけじゃない。僕は違う部分で勝負していきたい」と語る通り、一筋縄ではいかない難セッティングである。

己の感覚を信じ抜くための緻密な調整プロセスを経て、迷いを断ち切った二人。彼らがいかにして初日のティーグラウンドに立ち、この難コースを攻略していくのか。本戦でのショットの行方に注目したい。(文/山口哲平)


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