先週開催されたPGAツアー「ベイカレントクラシック by レクサス」において、日本勢最上位となる9位タイでフィニッシュした米澤蓮。その確かな手応えと勢いは、ゴルファー日本一を決める過酷なナショナルオープンの舞台でも色褪せることはなかった。

日本オープン初日、米澤はフェアウェイを正確に捉え続けるティーショットを武器に、スコアメイクの要所を押さえていく。タフなピン位置が待ち受けるセッティングの中、終わってみればノーボギーの「64(6アンダー)」をマーク。首位と2打差の2位タイという絶好のスタートを切った。本大会において彼が18ホールをノーボギーで回るのは、ローアマチュアを獲得した2021年の最終日以来、自身2回目となる。

上位をひた走るその数字だけを見れば万全の状態に思えるが、彼の体は決して完全なコンディションではない。9月の「ANAオープン」最終日に右肋骨を骨折しており、現在も「レントゲン撮ってないんで、わかんないですね」と、骨がくっついているかどうかの完治状況すら不明なままプレーを続けている。

怪我を抱えながら好成績を収めるスポーツ選手は、時に「満身創痍のヒーロー」として語られがちだ。しかし、米澤の自己評価にそうしたドラマチックな陶酔はない。痛めたことで慎重になり、逆に良い結果に繋がっているのではないかという問いに対し、彼はこう切り捨てる。

「決して完全な状態ではないですし、むしろ痛みとか何か懸念材料がない方向に向けてプレーできると思うので、それがプラスに働いているとは思わないです」

画像: 米澤はその言動から「プロフェッショナル」という言葉が似合うゴルファーだ

米澤はその言動から「プロフェッショナル」という言葉が似合うゴルファーだ

悪化させる恐怖についても「どんなにいい準備をしたって怪我するときはする」と達観している。そこにあるのは、冷徹なまでに現実的なプロフェッショナルとしての思考プロセスだ。

「痛くても何でも、出ている以上やるしかない。それを考えたところで、痛いからって誰か助けてくれるわけじゃないんで」

言い訳が通用しない厳しい世界で生きる彼は、限られた条件の中でいかに最善を尽くすかだけを考えている。疲労やコンディション崩れを防ぐため、ゴルフ場での球数を減らし、リカバリーに充てる時間を増やしている。その一方で、体に悪影響を与えないよう重い荷物を持たないようにしているかと問われると、思わず笑い声を漏らした。

「それは無理ですよね(笑)。自分で持って移動しなきゃいけないし、誰かがやってくれるわけでもないんだから」

自分を過剰に特別扱いすることなく、ただ淡々と、自分にできることとできないことの境界線を見極めている。

米澤の眼差しは、すでに日本の枠を超えた先へと向けられている。今大会が終了した後はすぐに渡米し、PGAツアー「バターフィールド バミューダ選手権」に出場。その後はスペイン・バルセロナで開催されるDPワールドツアー(欧州ツアー)の最終予選会に挑むという。

しかし、舞台がどこであろうと彼のスタンスが変わることはない。

「ただ1日やるだけですよね。コースもタフだし、それはどこでプレーしてても変わらないし」

怪我も、恐怖も、過酷な連戦も、彼にとってはただ乗り越えるべきフラットな日常の延長線上にすぎない。誰にも助けを求めず、自らの足で歩み続ける米澤蓮。装飾を削ぎ落とした彼の達観した強さは、世界への扉をこじ開けるための何よりの武器となるはずだ。(文・写真/山口哲平)

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