国内女子ツアー「富士通レディース」は3日目を終え、息を呑むような大混戦となった。通算12アンダーで首位タイに並んだのは鈴木愛とイ・ミニョン。しかし、1打差、2打差に虎視眈々と逆転を狙う実力者たちがひしめき合い、夕暮れの練習グリーンでは熱を帯びた最後の調整が続いた。たったひとつの栄冠を掴むため、彼女たちはどんな「覚悟」と向き合ったのか。最終日に向けた舞台裏を追った。
画像: 3日目を終え、通算12アンダーで首位に立ったのは、イ・ミニョンと鈴木愛(撮影/岡沢裕行)

3日目を終え、通算12アンダーで首位に立ったのは、イ・ミニョンと鈴木愛(撮影/岡沢裕行)

逆転を誓う者たちの野心と葛藤

画像: 首位発進した古江彩佳と蛭田みな美がそれぞれ、8位タイ(通算9アンダー)・5位タイ(通算10アンダー)に後退し、順位がガラッと入れ変わった(撮影/岡沢裕行)

首位発進した古江彩佳と蛭田みな美がそれぞれ、8位タイ(通算9アンダー)・5位タイ(通算10アンダー)に後退し、順位がガラッと入れ変わった(撮影/岡沢裕行)

3日目を首位発進した蛭田みな美は通算10アンダーで5位タイ、古江彩佳は通算9アンダーで8位タイに後退。2人が足踏みするなか、1打差の通算11アンダーの3位タイに吉田鈴、菅沼菜々が入り、通算10アンダーの5位タイには木戸愛、堀琴音が浮上した。

画像: 吉田鈴が46位タイ→8位タイ→3位タイ 堀琴音が7位タイ→8位タイ→5位タイ 木戸愛が38位タイ→21位タイ→5位タイ へジャンプアップ(撮影/岡沢裕行)

吉田鈴が46位タイ→8位タイ→3位タイ
堀琴音が7位タイ→8位タイ→5位タイ
木戸愛が38位タイ→21位タイ→5位タイ へジャンプアップ(撮影/岡沢裕行)

3位タイの菅沼は、パッティングよりスウィングの確認を念入りに行っていた。

画像: 2日目、3日目と、4バーディノーボギーで回り、1打差の3位タイに浮上した菅沼菜々。今季ツアー2勝目なるか注目だ(撮影/岡沢裕行)

2日目、3日目と、4バーディノーボギーで回り、1打差の3位タイに浮上した菅沼菜々。今季ツアー2勝目なるか注目だ(撮影/岡沢裕行)

隣には、5位タイの堀を今週はキャディとしても支える森守洋コーチの姿があり、動画を何度も撮影し細部を修正。練習後、大きく手を振りながら声援を送る熱狂的なファンに応える背中には、逆転への確かな手応えが漂っていた。

画像: 特に左肩から腕を意識して練習を行っていた

特に左肩から腕を意識して練習を行っていた

一歩後退した蛭田は、首位をキープした初日・2日目と同様、父・宏さんに見守られながら、短めのパットをひたすら打つ反復練習に没頭。築き上げられた娘と父の関係性が映し出されていた。

画像: 娘・みな美と、見守る父・宏さん

娘・みな美と、見守る父・宏さん

2日目にスコアを5つ伸ばし8位タイから優勝争いを狙った佐藤心結。

画像: 佐藤心結は、最終日は通算6アンダーの13位タイからの巻き返しを狙う

佐藤心結は、最終日は通算6アンダーの13位タイからの巻き返しを狙う

3日目は3バーディ4ボギーで1オーバーとスコアを崩し、13位タイ(通算6アンダー)と沈んだが、キャディと「めっちゃいい感じ」「こういうパットが入れられないと……」と活発に言葉を交わし、外れると「あー!」と天を仰ぐ自然な姿が見られた。等身大で重圧と向き合い、逆転を狙う姿がそこにはあった。

画像: もっとも和やかに練習していた佐藤

もっとも和やかに練習していた佐藤

追われる者、鈴木愛が纏う孤高の静寂

画像: 練習を始める前に、スティックの位置を確認していた鈴木

練習を始める前に、スティックの位置を確認していた鈴木

一方、追われる立場となった首位タイの鈴木が練習グリーンに現れたのは16時15分。

画像: 鈴木が行っていた最初のパッティング練習

鈴木が行っていた最初のパッティング練習

彼女は練習器具を使用し短い距離をひたすら打ち続けた。練習を始める前には練習に使用する2本のスティックが真っすぐに置かれているかどうかをアイアンを構えて確認する姿が見られた。この準備にも余念がない姿には、ツアー通算22勝を誇る精度の高さがうかがえた。

ストロークを念入りに確認後長めのパットの確認に励み、己のすべきことを完遂した鈴木は、16時50分ごろ、静かにグリーンを後にした。

最後まで練習していたのは、全英覇者・桑木志帆

画像: 最終日を明日に控え、最後まで練習していたのは桑木だった

最終日を明日に控え、最後まで練習していたのは桑木だった

その鈴木と並んで練習し、最後の一人になるまで残っていたのは、「AIG全英女子オープン」の覇者で、今大会の3日目を佐藤と同じ13位タイで終えた桑木志帆だった。

試合中の大勢のギャラリーに取り囲まれる光景とは裏腹に、夕暮れの日を背にして黙々と練習が繰り返された。途中、樋口久子氏から練習内容を問われ笑顔で話す一幕もあったが、眼差しは真剣そのもの。

画像: 練習中に樋口久子氏に声をかけられ、笑顔を見せた桑木

練習中に樋口久子氏に声をかけられ、笑顔を見せた桑木

コーチの助言に「脇を閉めたほうがいいんですよね?」と確認した結果、グリーン上でよく目にする、「ラインを跨ぎ目を閉じ、手を前にかざす」というルーティンに、「脇を閉め、手のひらを上に向けて前に出す。その状態で一度手を鳴らす」という新たな動きが追加された。

画像: 追加された新たなルーティン

追加された新たなルーティン

最後の一打を沈め、「よしっ! どう?」と声を弾ませ練習を終えたのは17時5分ごろだった。

熱狂のあとに訪れる、秋の冷気と運命の最終日

画像: 最後は、鈴木と桑木が並んで練習していた

最後は、鈴木と桑木が並んで練習していた

鈴木や桑木が練習を終える頃には、試合中に感じていた照りつける日差しの暑さはとうに消え去り、上着を羽織りたくなるような秋らしい寒さに包まれていた。

画像: 優勝争いを演じるプロたちに紛れ、黙々とボールを転がす23位タイのアマチュア・廣吉優梨菜の姿もあった

優勝争いを演じるプロたちに紛れ、黙々とボールを転がす23位タイのアマチュア・廣吉優梨菜の姿もあった

激しいスコアの伸ばし合いを終えた安堵など、そこには一切ない。誰もが優勝争いを恐れ、同時に渇望している。それぞれの「覚悟」を胸に、「富士通レディース」はまもなく運命の最終日を迎える。


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