愛知県の三好カントリー倶楽部 西コース(7300ヤード・パー71)で開催された「バンテリン東海クラシック」最終日。地元・愛知県出身であり、大会主催である興和株式会社のサポートアスリート(契約ホストプロ)でもある桂川有人が「67」をマークし、通算12アンダーで悲願の地元優勝を達成した。2022年大会では4打差の首位から逆転負けを喫し、涙をのんだ三好の地で掴んだ「4年越しの雪辱」。ホストプロとしての絶大な重圧を背負いながら安定したプレーを続けていたが、その終盤には劇的かつ過酷な試練が待っていた。魔の上がり3ホールの始まりは、単日平均ストローク3.1719(難易度4位タイ)を記録した難関の16番(パー3)だった。

16番だるま落としのダボ――田中裕基と並んだ絶体絶命の危機

画像: 16番で「だるま落とし」をしてしまい、驚いている桂川有人

16番で「だるま落とし」をしてしまい、驚いている桂川有人

桂川のティーショットは無情にも右のラフへ。そこからの脱出について、本人は驚きとともにこう振り返る。

「すごいつま先上がりの傾斜で、60度のウェッジをチョイスしてギリギリを狙ったんですけど……。下をくぐってしまって、だるま落としみたいになって。全然頭にないミスが出ました」

優勝争いの極限状態の中、よもやのミスでボールは動かず。しかし、桂川はここで崩れなかった。

「そこからグリーン手前までうまく運べたので、2パットのダブルボギー。逆にダボで済んだかなという感じです」

予期せぬトラブルにも冷静さを失わず、被害を最小限に食い止めた。この痛恨のダブルボギーで一時は同組の田中裕基と通算11アンダーで並ぶ絶体絶命のピンチに陥ったが、このメンタルコントロールが奇跡のリカバリーへの伏線となる。

死闘の17番――流れを引き寄せた執念のパーセーブ

そして迎えた17番(パー4/難易度4位タイ)。桂川自身が「個人的には17番が一番大事だった。一番苦しかった」と語る最大の山場だ。

ティーショットを「一番入れちゃいけない」左バンカーに入れた桂川は脱出に苦戦し、3打目をピンまで77ヤードも残してしまう。さらにその3打目はバックスピンで戻りすぎ、難しいパーパットを残す絶体絶命の状況となった。

同組で優勝を争う田中が先に難しいパーパットを沈め、「これ(自分のパーパット)を入れないと」と極限の重圧がかかる中、桂川は見事にねじ込んだ。「あそこで入れることができたので、最後のバーディパットにつながった」の言葉通り、この死闘のパーセーブが勝利の流れを引き戻した。

わずか12人しか獲れなかった18番――10mを沈めた直感のパット

迎えた最終18番(パー4/平均4.1719・難易度4位タイ)。この日バーディを奪えたのが出場64名中わずか12名という難関ホールだ。

桂川はピンまで170ヤードのセカンドショットを7番アイアンで打つも、同じ面に乗せられず、10メートル弱の下りスライスという超難解なラインを残した。

「入れるしかないという気持ちもありながら、3パットで終わるのはみっともないなという葛藤があった。全くラインが分からなかったが、今感じているものを信じようと思って打った」

画像: ボールがカップに沈む前からガッツポーズの初期動作を始めていた桂川

ボールがカップに沈む前からガッツポーズの初期動作を始めていた桂川

迷いを振り切り、直感を信じて打ち出されたボールは、地元の大歓声とともにカップに吸い込まれた。

家族と恩人へ捧ぐ歓喜――地元の英雄へ

劇的な優勝決定の瞬間、桂川の胸には熱いものが込み上げた。

「自分でも不思議というか、何でグッと来たかは分からないんですけど……多分地元の温かい声援と、家族が見ている前っていうのと」

画像: 父親代わりの祖父と優勝カップを持つ桂川

父親代わりの祖父と優勝カップを持つ桂川

ゴルフを始めるきっかけとなり、プロへの挑戦を支えてくれた父親代わりの祖父の前で挙げた最高の恩返し。

「16番も、ダボがあったから勝てたかもしれないですし、何とも言えないですけど」

優勝賞金2200万円(525ポイント)を獲得し、JGTOポイントランキングも30位(605.000pt)へ大幅上昇。前週の欧州ツアー2勝目に続き、国内ツアーでも圧倒的な存在感を証明した。

絶望と歓喜が入り混じる魔の上がり3ホールを制し、桂川有人は地元の大声援の中で本物の英雄となった。

写真/岡沢裕行


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