「LIV 2.0」への不信感と、頭を占めたノイズ
ラームはまず、LIVで過ごした3年間について「素晴らしい経験であり、個人としてもチームとしても素晴らしい成果を残せた」と振り返った。しかし、脱退の決定的な引き金となったのは、推し進められようとしていた新体制「LIV 2.0」への強い不信感だった。
「未知数が多すぎた。チームゴルフから離れ、LIVをLIVたらしめていた独自性が失われ、単なるレギュラーツアーになってしまったように見えた。だからこそ、その道へ進むつもりはなかった」
さらに会見では、移籍当初に合意していた金銭的条件が得られなかったことに対する不満も認めている。コース外で続いた一連の騒動について、「認めたくはないが、間違いなく頭の中のノイズ(雑音)になっていた。自分がやるべきことへの集中力と努力を奪う、大きな妨げだった」と、ゴルフに没頭できなかった苦悩を明かした。
ケプカの前例と、PGAツアー復帰への高い壁
決別を選んだラームだが、PGAツアー復帰への道筋は現状、正規ルート(①最後にLIVゴルフ関連イベントに出場した日から1年以上経過②DPワールドツアーやQスクールを経てツアーカード獲得)しかない。
「来年の自分がどうなるかは、まだ本当に分からない。来季復帰への道があるのかどうか、PGAツアーとはまだ話し合いができていない」
もし話し合いができたとして、焦点となるのは、PGAツアー復帰に際して科されるであろうペナルティである。過去にLIVから復帰を果たしたブルックス・ケプカの前例を引き合いに出されると、ラームはシビアな現実認識を示した。
「もしブルックスと全く同じ条件を提示されれば受け入れるだろう。しかし、それは大きな『IF(もしも)』だ。彼と同じ寛大な条件が自分に提示されるとは到底思えない」と、厳しい制裁を覚悟している姿勢を滲ませた。
欧州ツアーへの恩義と、Race to Dubai「51位」の緊迫感
現在の正規ルートでPGAツアー復帰を目指す場合、彼を救うのはかつての主戦場である欧州ツアーである。
しかし、現在のラームはDPワールドツアーのポイントランキング(Race to Dubai)で51位に位置している。普段なら優勝の二文字しか頭にない世界トップの王者が、来週の最終戦へ進出する「上位50位」のカットラインを意識して大会に臨むという、異例の緊迫感に直面している。
それでも、温かく迎え入れてくれた古巣への思いは揺るがない。
「DPワールドツアーは本当に寛容で、私が出場することを許可し、サポートし続けてくれている。最悪のシナリオ(PGAツアー復帰がかなわない)になったとしても、この素晴らしいツアーで丸1年間戦えるというのは、非常に良いセーフティネットになる」
香港で掴んだ確信、そして古巣への「恩返し」

26年シーズン最高の瞬間と話したLIVゴルフ・香港で最終ホール終了後、ギャラリーに応えるジョン・ラーム
会見の最後、今季最高の瞬間を問われたラームが挙げたのは、LIVゴルフ・香港での戦いだった。
「16番ホールでバーディパットを沈め、5打差に広げて久々の勝利を確信した瞬間だった」
コース外での「雑音」と向き合い続けた3年間を経て、実戦から離れていたこの7週間は、自宅で生まれたばかりの第4子を抱き、毎朝上の子たちを学校へ送る「一人の父親」としての時間を過ごした。
「もし将来PGAツアーに復帰できたとしても、DPワールドツアーへのサポートは続け、欧州の大会に出場し続ける」
そう力強く語ったラーム。不透明な未来を抱えながらも、自らを受け入れてくれた古巣への「恩返し」の思いを胸に、男は静かにティーグラウンドへと向かう。
写真/LIVゴルフ
