寒いからこそ、いまの力が試される!
午前7時のトップスタートに備え、練習場で薄暗い早朝から球を打ち始める参加者たち。時間とともに冷たい風が強くなるタフなコンディションにもかかわらず、皆が「今できる精一杯のプレーをしよう」と張り切ってスタートしていった。
高校生女子の部を制した長谷川愛美さん(3年)は、前半苦しんだものの周りもスコアが伸びていないことを知り「後半頑張ればチャンスがある」と奮起。我慢のゴルフを続け6回目の出場にして初優勝を飾った。「中学生の時から出ていて知り合いが多く、楽しくプレーできるのもこの大会の思い出です。最後に優勝できて嬉しい」と笑顔をみせた。
12月開催ということもあり、一年を締めくくる大会として出場している参加者も少なくない。高校生男子の部を制した江尻隼人さん(3年)は「高校最後の大会での優勝は嬉しい。これで来年は良いスタートが切れそうです」と大学進学後は3年生までに「日本学生」での優勝を目指しているという。
中学生女子の部を制した新地真美夏(3年)さんは、「寒い時期にある大会だから、しっかりと準備しないと結果はでない」と、今の自分の力が試される大会という。この日は思うように体が回らずショットが曲がったが、後半は番手を上げてコントロールショットを多用しスコアメーク。大会4度目の参加で初優勝を飾った。
中学生男子の部を制した島田楽生人(中学1年)さんは「去年1打差で優勝できず悔しかった」と、この日は一年の練習の成果をぶつけ1年生ながら見事に優勝を飾った。
小学生女子の部で優勝した近重怜奈(小学6年)さんは「前半はショットに苦戦したけど、後半は迷わず打てるようになった」と、風に対応できるようになったのが勝因だったと振り返った。
アプローチやパットが良くスコアメイクができたというのは、小学生男子の部で優勝した峯村怜(小学6年)さん。「前半から難しい奥からのアプローチで寄せワンを取ることができて気持ちが乗っていけました。でもアイアンは課題で、今後はもっと精度を上げていきたい」と、風の強い中でのプレーで多くを学んだようだった。
「ここでしかできない大会にしたい」(有賀園ゴルフ有賀史剛社長)
競技と共に「ゴルフを通じて社会で活躍できる人材を育てる」をテーマに掲げた大会は、コロナ以前は子どもたちがプレーしている間、保護者向けにセミナーを実施してきた。第一回は、田島創志、武藤俊憲、矢野東の3人の群馬県出身のプロゴルファー、その後も男子ツアーで帯同トレーナーを務めた経験を持つ菅原賢氏、東大ゴルフ部監督の井上透プロなど、サポートする側にとって貴重な話が聞ける機会を作ってきた。
「技術を競うだけじゃなく、ここでしかできない大会にしたかった」。そう話すのは大会副会長を務める有賀園ゴルフの有賀史剛社長だ。今でも印象深く残っているのがプロ3人の話で、「この中でプロになれる子はいません」と厳しい言葉が飛び出したという。「彼らは文武両道で、どうやってそれができたか話してもらったんです。その中で厳しい言葉もあって、夢に向かって努力するのは大切ですが、一方でプロになれるのはほんの一握り。改めて、ゴルフを通じて人として成長してほしいと思いました」。
自身もプラスハンデの腕前で、現在は群馬県ゴルフ連盟の理事長。ゴルフに深く関わってきただけに、子どもたちへの思いも強くなっているのだろう。
今後はコロナ禍で中止していた保護者向けのセミナーを再開し、同規模での大会を続けたいという。また、より魅力的な大会となるように特典を増やすことも検討している。現在は、各部門優勝者と成績上位者に翌2023年の「ゴルフダイジェストジャパンジュニアカップ」の推薦枠、高校女子の優勝者には3月に行われる女子ツアーの「ヤマハレディースオープン葛城」のマンデートーナメントの推薦枠が贈られているが、さらなる充実を図るつもりだ。
群馬県の子どもたちのためにと始めた大会は、いまや関東圏はおろか全国から子どもたちが集まる大会へと成長した。来年も独自色のある、かかわるすべての人が笑顔になる大会になりそうだ。