日曜日。2000以上にふくれあがったギャラリーの大半が尾崎の後を追う。

河野高明が1アンダーへとスタミナ切れで大きく後退、かわって杉本英世がジリジリ追い上げてきたが、プレーのスピードで水をあけたためか尾崎の周辺まで、その圧迫は届かない。

つい前の週、地元、習志野の関東オープンで巧者・謝永郁に逆転された時の緊張は尾崎の顔にない。

そして迎えた最終ハーフの10番ホール尾崎のジャンボ級長打が爆発した。

この10番、495ヤードのパー5、フェニックスとしては最短のロングホールだが、やや左へ曲がるフェアウェイには数十本の松が点在する。

その上、グリーン手前40ヤード付近にフェアウェイを完全に区切る型に大きなバンカーが横たわる。ツーオンを狙うには十中八、九このバンカーにトラップされてしまう。

だが、181センチ、83キロの体軀で長打を武器にする尾崎にはそのバンカーは見えない。300ヤード級のドライブの後、4番アイアンを短めにもった尾崎はがっちり叩いた。ボールは左奥に立ったピンへ絵に描いたようなフックのラインを辿って、手前4メートルに止まった。

画像1: 尾崎将司。初優勝の舞台裏!@1971年日本プロ【Vol.2】
栄光の夕焼け雲!翼を赤く染めたジャンボ機がいよいよ離陸。

そのパットを執拗に狙って沈めた瞬間、尾崎はこぶしを振り下ろして何か叫んだ。クールな顔が真っ赤に怒張した。

首位に立って9ホール目、ショットを曲げ出した島田に3打差、遠くから追ってくる杉本にも3打の差をつけたこのイーグルで、尾崎は優勝の二字を意識した。

それからの尾崎はバーディとボギーのジクザク行進を始めた。

13番、左へ直角にドッグレッグし、フェアウェイが自転車レースのバンクのように傾斜する。が、尾崎には無関係。

ドライバーではグリーンを狙っても突き抜けた午前のボギーを反省、バッフィーで刻んでもグリーンへはサンドウェッジだ。これを4メートルに寄せてバーディ。

でも、考えるゴルフはアポロ型尾崎には似合わない。

14番、一打を右の林に突っ込んでボギー、15番はスリーパット、これで5アンダーに逆もどり。

ところが、追跡者の杉本もその頃、12番の最難のパー4で、この試合3個目のボギーを叩き3アンダーに後退していた。

画像2: 尾崎将司。初優勝の舞台裏!@1971年日本プロ【Vol.2】
栄光の夕焼け雲!翼を赤く染めたジャンボ機がいよいよ離陸。

16番、405ヤードのパー4。右へゆるくカーブしたホール。尾崎は気を取り直して、右の林越えに長打を放ち、2打がウェッジ。またも、単純なゴルフに立ち直って、2メートルのバーディパットを決めたのである。通算6アンダー。

巨体に汗と闘志をたぎらせた杉本がたとえ16番と最終のロングホールを獲れたとしても、まだひとつの貯金が余る。

17番、210ヤードの難しいパー3で、慎重に3メートルのスライスラインを決めてパーでかわした尾崎は栄光にもっとも近い男という印象をギャラリーに焼き付けた。

今年24歳。甲子園のヒーローとなってから7年目、今度はプロゴルフの世界でヒーローとなった尾崎。

最終グリーンをおりた尾崎の顔は夕陽と興奮の色で赤く染まった。まさに、栄光の夕焼け雲に向かって巨体のジャンボ機が翼を赤く染めて離陸した瞬間に似たものだった。

(月刊ゴルフダイジェスト1971年11月号)

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尾崎将司。初優勝の舞台裏!@1971年日本プロ【Vol.1】2週連続でやってきた初優勝のチャンス。

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尾崎将司。初優勝の舞台裏!@1971年日本プロ【Vol.3】敵地に乗り込んでこそ、価値がある!

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