――ハンドダウンすると左手の三本指がゆるまないとのことですが、その場合、親指側に目一杯コックさせちゃっていいものですか。
僕はいいと思いますね。手首って前後左右に動くようになっていますけど、もっとも折れにくいのが親指側ですよね。ですからいくらコックさせても、そんなに折れないですし、アドレスでこれ以上折れないところまでコックさせておけばスウィング中に余分な手の操作をしなくてもすむじゃないですか。
逆にハンドアップしたら、左の小指はゆるむし、スウィング中にその角度をかえる動作をせざるを得なくなりますから、複雑で、しかも狂いの多いものになっちゃいます。
――グリップ を“しっかり”握ろうとすると、肩に力が入っちゃいませんか。一般にそうなる人が多いと思うんですけど。
グリップをしっかりさせて、肩の力は抜くというのはたしかに難しいですよね。残念ながら自分で訓練するほかないんじゃないかな。ただ、左の小指を “しっかり”させておけば、その握りをつかさどる筋肉は腕の内側についていますから肩に力は入りにくくなると思います。それから脇も締まりますしね。
――両脇のことですが、昨年の(1987年)「日本アマ」で中部さんのアドレスを観てたらいったん構えたあとで、両肩を揉み上げるようにして上へもっていってから、両腕を上から下へ降ろす動作をしてましたけど、あれはどういう“おまじない”なのですか。
“おまじない”だなんて、何を言うんですか。両腕は肩から地面へ“だらーん”と垂らした格好になったほうがいいと思う、ほぼ垂直に近い感じで。
そういう腕の 格好にするためにああいうことをやってるのと、もうひとつはあの動作をやると腰骨も伸びるし、背筋も伸びるんです。
若いころ、頭を動かさずにスウィングするにはどうしたらいいか、その感じをつかむために、壁に前頭部(おでこ)をつけて、素手で素振りする練習をしていたんです。
頭を動かさずにスウィングするのがいかに苦しくて、窮屈なものなのか。頭を動かさないというのはこうゆうことなのか、という感覚をつかむためにはいい練習だったと思いますね。
おでこを壁につけて素手を振ってみますとね、最初のうちはたいてい手が壁に当っちゃいますよ、きっと。
(1988年 3月、チョイスVOL.39)
その①の記事はこちら↓↓
中部銀次郎「握る」「狙う」「立つ」の手順 その①ショットの成否は9割がアドレスで決まる