感覚はまことにうつろいやすい。うつろいやすいものをひとつの範鋳に封じ込めることは出来ない。だけど、出来ることならそうしておいたほうが狂いが出にくい。中部銀次郎は、感覚にまかせてはいけないものと、まかせていい部分があると言う。
少なくとも頭を動かさないでクラブを振るという感覚はどういうものなのか。グリップを壁にぶつけないように手を振るというのはどういう感覚なのか、それをアドレスの段階で持っているのか、持っていないのか。そのことで、うつろいやすい感覚をいかばかりかつなぎ止めることができるだろう と考えた。
――スウィング論で誰もが同じことを言っているとしたら「頭の動きを最小限にとどめること」、と、いうことでいいですか。
僕自身、30 年近くもの間、なんらかの方法で頭を動かさずにスウィング出来ないか、と、極論したらそのことだけをテーマにしてきたようなものですよ。 しつこいぐらいに。
ところが数字 (スコア)の上であらわれたものといったら、たった3つの間を行ったり来たりしているだけ。3つの間というのはハーフのスコアのことで、 36から39の間を行きつ戻りつしている。
さまざまな角度からチェックを試みた末に、ミスショットの犯人はアドレスにあること気づいたんですが、それなら、スウィング中に頭が動かないようにするためのアドレスの方法があるのではないか、考えたわけです。
頭を動きにくくするためにはアドレスでどういう状態にしておいたらよいか。なにせ頭は宙に浮いているようなものですからね、感覚的にとらえにくいわけですよ。そこで、“脳天の髪”を思いついたんです。頭で体を吊り上げるような感じ、そういう感覚が持てたとき頭は動きにくい。頭が立ってくれば立ってくるほど動きにくくなって、しかもゴルフスウィングという、ちょっと特殊な運動がやりやすいことを発見したわけです。
――なるほど。
スウィング軸は頭のテッペンから尾骶骨に抜けているイメージですからね、僕の場合は。となるとやっぱり、頭は立てられるなら、立てておきたい。そうすれば軸が不安定なものにならないわけで、したがって正しいスウィングがまっとうされやすくなる。
頭は三つの動き方をしますよね、前後と左右と上下と。どっちの方向にも動かさないようにしたい。顔を下向きにすると、スウィング中にどっちの方向にも動きやすくなるんです。
下手をすると左右に動いたうえに、上下にも動く。そうなったら軸もなにもなくなって、ボールを正しく打つ動作がますますしずらくなっちゃいます。仮に正しく打ったとしても、えらく複雑な運動をして、偶然に真っ直ぐ飛んだにすぎないと思うんです。
(1988年 3月、チョイスVOL.39)
その①の記事はこちら↓↓
中部銀次郎「握る」「狙う」「立つ」の手順 その①ショットの成否は9割がアドレスで決まる
その②の記事はこちら↓↓
中部銀次郎「握る」「狙う」「立つ」の手順 その②グリップを “しっかり”させ 肩の力を抜くのは難しい