頭を動かさないために中部銀次郎は“脳天の髪”を感じるようにした。空から神様に引っ張ってもらう感覚で、軸のテッペンにある頭を吊り上げるようにアドレスをした。
ボールを上から睨みつけようとすると、頭の位置が下がりすぎてしまう。そうなるとアゴも絞って、(スウィングという)運動がしずらくなるんです。スウィングの軸は脳天から尾骶骨へ、一本の細い鋼糸が抜けているようなものだ、と、僕は思っているわけです。そういうイメージを持っている ので、首はなるべく前へ倒れないほうがいいわけ。
――できることなら、真っ直ぐ伸ばしておきたい?
神様が頭上の宙天から手を伸ばしてきて、脳天をの髪を一本、引っ張り上げる感じで、テークバックをスタートさせる前に、脳天に痛みを感じ、そんなに 引っ張らないでくださいよ、といった調子で、釣り人がウキで当りをつけるみたいに、ヒクッヒクッと頭を立てる動き。そのたびにアゴもヒ クッヒクッと上がる。そして両目はボールを睨むことなく、下目使いになる。
そういうことをやらなくても、軸が一直線になっている感覚がつかめればいいんですけど、僕の場合はやらないよりやったほうがつかめる。感覚にまかせていい部分とまかせてはいけない部分があるわけですよ、アドレスでも。
膝、腰、肩の ラインにしてもそうですよね。右手のグリップが左手の下にあるので、右肩が出やすくなる。膝と腰のラインは飛球ラインと平行にして、肩だけが平行じゃない構えをしたら、その時点でもう軸はよじれたものになってしまう。
膝にしても、 腰にしてもしばしば“平行”になっていない。そうなったらやっぱり軸は、スウィングする前によじれてしまう。ですから、そういう歪みを正す感覚が持てるようにしておくなり、歪みにくい立ち方、構え方はこうなんだというものをつくっておかないとまずいと思うんですね。
そしてアドレスが完了したら、この立ち方をして、こういう構え方をしたんだから、ボールは狙ったところに飛んで行くに決まってる、という確信をもってスウィングする。
――アドレス に始まって、アドレスに終ると言えるぐらいですか。
僕の場合はね、アドレスで八割がた、いや九割がた決まっちゃいます。
――ミスの犯人はアドレスだ!
そう思って間違いないでしょう。
その①の記事はこちら↓↓
中部銀次郎「握る」「狙う」「立つ」の手順 その①ショットの成否は9割がアドレスで決まる
その②の記事はこちら↓↓
中部銀次郎「握る」「狙う」「立つ」の手順 その②グリップを “しっかり”させ 肩の力を抜くのは難しい
その③の記事はこちら↓↓
中部銀次郎「握る」「狙う」「立つ」の手順 その③頭の動きを最小限にとどめる“脳天の髪”