繰り上げ出場から一転
メジャー初制覇!
全米プロゴルフ選手権は、シンデレラ・ボーイが誕生すると言われている。1981年初優勝のラリー・ネルソン、1983年のハル・サットン、1986年のボブ・ツエー、1989年のペイン・スチュワートにしても、この全米プロでメジャー初優勝してトッププロとして存在感を表し、活躍して行ったからである。
けれども1991年のジョン・デーリーほどドラマチックな筋書きはない。彼は、欠場選手を待っていたウェイティングリスト組だった。
ぎりぎりまで待っていたが結局あきらめて自宅に戻った。ところが、ニック・プライスが急遽、夫人の出産のために欠場したため空席ができて、再び自宅から車を夜通し走らせて、ようやく初日のティアップに間に合った。フラフラのまま出場して見事優勝したのだ。それまでジョン・デーリーは、2部ツアーに出場していた選手だったのである。
もっとも負けん気も強くて、2部ツアーにいたころ、「あいつらレギュラーツアーで戦っている奴らと俺は、(ツアーテストで)たかだか1ストロークしか違わなかったんだ。それは奴らがそのとき幸運に恵まれ、俺がたまたま1打不運だっただけなんだ。だから、レギュラーツアーに行ったらすぐに勝ってみせてやる」と言い放っていた。
いかにもデーリーらしいが、彼はこの大会でツアー初、メジャー初優勝して、その後活躍し、全英オープンにも優勝した。残念ながら、途中アルコール依存症で問題を引き起こしたりしたが、僕は彼のような愛すべきキャラクター、悪童のような雰囲気はツアーには欠かせない存在だと思っている。
悪童デーリーが、見事に輝きを見せたシーンは、いまも忘れられない。(文・三田村昌鳳)