2014年の報知シニアアマゴルフ選手権 優勝 矢吹元良さん 68歳
2012年 日本ミッドシニア選手権2位の雪辱を晴らすために、日課のストレッチで飛距離を維持し、寄せとパットでスコアメーク。還暦を過ぎてからの挑戦で、目指すは日本ミッドシニア王者だ!
“女の子座り”だって
できちゃうんですよ(笑)
取材でシニア世代の上級者にお会いするたびに感じること。とにかく、ビックリするぐらい“若い”。 還暦を過ぎても、ドライバーの飛距離は250y以上が当たり前。肌ツヤはいいし、なにより足腰が強い。
今回登場のチャンピオン、昨年の報知シニアアマで優勝した矢吹元良さんも67歳(取材当時)にして、この股関節の柔らかさである。
矢吹さんは両足を内側に倒して座る、いわゆる“女の子座り”も難なくこなす。この座り方は骨盤の形状の違いから、基本的には男性には不可能ともいわれているが、
「私も最初はキツかったんですが、毎日やっているうちに、少しずつ柔らかくなって、今ではひざが床にぺったりつくようになりました。これができるようになってからは、腰痛もなくなりました」
20年以上前にスキーでアキレス腱を痛めた影響で腰痛を発症。その治療のために始めた、朝の日課の股関節ストレッチ。それが今では、ゴルフのアマ競技で勝つためのトレーニングになった。
「60歳でサラリーマンを定年退職するまでは、仕事が忙しくて、試合に出たくても、なかなか出られませんでした。57歳のときに初めて出場した全国大会の全日本パブリックシニアで優勝しましたが、本格的に試合に出るようになったのは60歳を過ぎてからです。
もともと私は飛距離が出るほうじゃないので、身体が硬くなると余計に飛ばなくなって、全国レベルの大会では戦えなくなる。週に4~5回は練習場へ行きますが、私にとってストレッチは、球を打つ以上に大事なトレーニングなんです」
矢吹さんの240ヤードドライバーショット
バックスウィングでしっかり上体をねじることでスウィングアークが大きくなる。「腰は正面に向けたままにしておくぐらいのイメージで、右股関節に体重を乗せてバックスウィング。上半身と下半身の捻転差が、飛距離を維持する秘訣です」
股関節の可動域が狭くなると、上体をねじれないので、トップが浅くなってしまう。「右ひざを逃がして、腰も右に向ければ、体は回りますが、それではパワーが溜まりません。スウィングがゆるんで、ヘッドも走らないし、軸もブレてしまいますよ」
ボールを上からしっかり叩くには、高いトップが必要。「クラブをインに引いてしまうと、トップはフラットになります。クラブを縦に動かすイメージで、高いトップを作っています」
腰が目標を向いても、胸の向きは正面をキープ。67歳の年齢を微塵も感じさせない、締まったインパクトだ。「練習場へも週に4~5回は行きます。1回に打つ球数は200球ぐらい。
アイアンとドライバーが中心ですが、1本のクラブで距離や球筋、高低を打ち分けたり、実戦的な練習をします」
クラチャン5連覇
2008年からゴールデンレイクスCCのクラブチャンピオンを5連覇。マッチプレーに強い矢吹さんのプレースタイルが伺える。集中力が高まると相手の嫌がるパットは必ず入れる“マムシの矢吹”は健在だ。
寝ないでパットを修正
逆転でタイトルを奪取
全国のクラブ競技で前年度にシニア選手権を制した人だけに出場資格が与えられる報知シニアアマゴルフ選手権。ゴールデンレイクスCC(栃木)のシニア王者として出場した矢吹さんの、初日(2日間競技)の成績は6位。悲観するような順位ではないが、その日は“眠れぬ夜”を過ごしたという。
「パットが思うように打てなかったんです。スコアは75でしたが、バーディチャンスをひとつも決めることができなかった。他の選手に飛距離で劣る私にとって、パットはスコアメークの生命線です。これを修正しない限り、自分に勝ち目はありませんから」
パットが入らない原因は、転がりの悪さにある。体力を回復する貴重な時間を削って、ホテルの部屋(?)でボールを転がした。
「決めたい、という気持ちが強いあまりに、意識がカップにいって、アドレスで肩が開いていることに気付いたんです。転がりが悪い原因はコレだったんだ、と」
勝負の2日目はパットの調子が戻り、前日の6位から見事な逆転優勝を果たしたのだ。
ゴルフはやっぱり
寄せとパット
「最近はレギュラーの試合には、ほとんど出なくなっちゃったけど、自分よりはるかに飛ばす若い人とラウンドしても、スコアではまだいい勝負ができる。
ゴルフでいちばん肝心なのは、パットとアプローチだと私は思っています。この2つに自信があれば、その前のアイアンショットも、ドライバーのティショットも、気持ちの余裕を持って打てますからね」
アプローチやパットでしぶとく拾ったパーを、“汚いパー”とか、“泥臭いパー”などとよくいう。パーオンして2パットが、スコアカードどおりのきれいなパーだと。
しかし矢吹さんは、それを真っ向から否定する。むしろ、自分に流れを呼び込める、“泥臭いパー”こそが、もっとも美しく、そして価値のあるパーなのだ、と。
「もう67歳になったけど、真剣に競技ゴルフに挑戦するようになって、まだ10年にも満たない。目標は2012年にあと一歩で逃した、日本ミッドシニアのタイトル。これからが“本番”なんですよ」
上げたり、転がしたり、アプローチは58度のSW1本で寄せていく。
「アプローチは得意だし、スコアメークの肝。使い慣れたSWじゃないと上手くいきません」
アプローチは振り幅が小さいので、手先でクラブを操作しがちだが、それがミスの元だと矢吹さん。「手先でクラブを上げずに、しっかり体を使って振るように意識しています」
月刊ゴルフダイジェスト 2015年6月号にて掲載