月刊ゴルフダイジェストの好評連載「振り子の教室」。パットにまつわるさまざまな疑問や悩みを、パット研究家の星谷孝幸先生が科学的な視点で解説してくれます。
今回のテーマは「センターシャフト」パターの効能。キム・キョンテをはじめ、パット巧者と言われる人たちが好んで使っているようですが…。センターシャフトっていいの? そして僕らにも使えるの? ほしや先生、教えてください。
Q
センターシャフトを使って
みたいけど僕らにも合うの?
A
感性を100%生かしたい
には合っています
2015年の男子ツアーは、キム・キョンテ選手が圧倒的な強さを見せて賞金王に輝き、そして今年も賞金1位の座についています。
パット巧者としても知られるキョンテ選手が、長年手にしているのが、いわゆる「センターシャフト」のパターです。
文字通りシャフトがヘッドのちょうど中央部分に刺さった形状のパターですが、これは、一般に“難しい”パターとして知られています。しかし、ツアーを見渡してみると、こと日本男子ツアーのパット巧者に愛用者が多い。その理由がどこにあるのかを考えてみましょう。
センターシャフトで最も有名なパターは「ブルズアイ」。別名「キャッシュイン」とも呼ばれる“T字型”パターです。
このタイプは、構造上重心距離が基本的に“ゼロ”。非常に操作性が良い反面、ちょっとしたトウヒール方向の打点のブレには超敏感。簡単にフェースが開いたり、閉じたりしてしまうからです。試しに、両手でグリップを左右から挟み、ヘッドをクルクル回してみると、抵抗感なく回るのがわかると思います。これが、センターシャフトが“難しい”とされる所以です。
プロゆえに、そんな難しいパターを使えると見ることもできますが、プロだからこそ感じられるメリットもセンターシャフトには数多く存在します。
まず、シャフトの延長線上にフェース面がある(FP値が大きい)ために、打ち出し方向を意識しやすい。FP値が大きいということは、インパクト時に自分の感覚とヒットするタイミングにズレが起きにくいことにもつながるので、引っかけにくくなります。
自分のタッチが
ダイレクトに伝わる
さらに、芯を外した時に、ミスが如実に手に伝わるとともに、結果にも現れます。重心距離が“ゼロ”なので、ヘッドを回転させて、トウ側を回していくように打っても、方向性が乱れるだけで、その力がボールに伝わらないのです。
つまり、センターシャフトは、振っただけの力が、ボールの転がる距離を決めると言っても過言ではありません。言い換えれば、より細かなタッチが反映されるということ。芯でさえ打てれば、転がりすぎたり転がらなかったりということが起こりにくいのです。
このように、センターシャフトは非常に“繊細”なパター。常に芯でヒットできる人は、メリットを感じられますが、一般的には扱いにくさのほうが勝ってしまうでしょう。個人的には、もう少しアローアンスのあるパター(クランクネックのピン型、ベントネックのマレット等)をお勧めしたいですね。