アマチュア向けに発売された2ボールにプロが真っ先に飛びついた
革新と奇抜は紙一重だ。革新的でも性能が伴わず、単なる奇抜に終わったクラブは数えきれない。逆に、見た目は奇抜でも性能的な裏付けがあれば、それは革新となる。
1966年に東京よみうりCCで開催されたカナダカップでゲーリー・プレーヤーが使っていたパターがいい例だ。L字やT字が主流の当時、奇抜そのもの。だが、それがワケのある形状であり結果を出すと、ほどなく革新とみなされ、スタンダードとなった。「ピン・アンサー」だ。

左:テーラーメイド「ロッサモンザスパイダーAGSI+」(2008年発売)、右:オデッセイ「ホワイトホット2ボール」(2000年発売)
オデッセイの「ホワイトホット2ボール」も然り。01年シーズン終盤、アニカ・ソレンスタムは日本で開催されたシスコワールドレディスマッチプレーで勝つと、翌週のミズノクラシックも制覇。シーズン8勝目を挙げ、4度目の賞金王を決めた。このときのパターが2ボール。
ミズノクラシックで5連覇を達成したときもアニカ・ソレンスタムは2ボールパターを使用していた
守旧派から見れば、アイデア商品か練習用にしか見えず、メーカー側もパットの苦手なアマチュアがターゲットと言っていたくらいだが、そのポテンシャルをいち早く認めたのはプロたち。従来のマレット型と比べて、ヘッドの奥行きが長く、その分重心深度が深くなり、重心回りの慣性モーメントも大きくミスに強い。
また多くのプロたちが「深度が深いから真っすぐひきやすくボールを押し出す感じがある」と言った。これこそ2ボールの真価で、その後多くの亜流が出現し、総称して、「ネオ・マレット」と呼ばれるようになった。

岩田寛プロはQTを受けた12年前から「2ボールパター」を使用している
2ボールがデビュー後の5~6年間、ガリバー的な強さを誇る中、2008年には「ロッサモンザスパイダー・AGSI+」が登場。以来2ボール対抗モデルとして最右翼の地位にある。スパイダー(クモ)という名の通り奇抜な形状だが、中央の黒い部分は比重の軽いアルミ合金、外周は比重の重いスチール製で、周辺に重量配分し、慣性モーメントを大きくした。
プロだって芯を外すこともある。その影響を最小限に抑えてくれるのが彼らにとっていいパターで、その先駆けが2ボールであり、スパイダーだった。奇抜の中の革新が評価され、スタンダードへと定着していったのだ。
文/近藤廣
(月刊ゴルフダイジェスト2015年3月号より抜粋)