FILE4 憧れのバックティで打ってみたい
普段のゴルフで、皆さんはいつも「どのティから」プレーしていますか?
ティグランドには、大きく分けるとレディスティ、レギュラーティ、バックティの3ヵ所あって、女性はレディスティから、男性はレギュラーティからプレーするのが一般的になっている。
では、バックティは誰がプレーするところなのかとなるが、これはゴルフ場の競技であるクラブ選手権とか理事長杯、あるいは月例競技で使用するところが多い。ゴルフの難易度を示すコースレートは、このバックティから距離を計測するし、またバックティからのヤーデージがゴルフ場の本来のヤーデージとなる。
レギュラーティは、18ホールのトータル距離が、およそ6000ヤード前後となる設定。ひとつ前の「レディスティ(ladies' tees)」は、およそ5400ヤード前後、ひとつ後ろの「バックティ(championship tees)」は、およそ6600ヤード以上となっていることが多い。
従って、レギュラーティやレディスティからプレーすることは、そのゴルフ場が本来持っている難易度の中でプレーしていることにはならないわけだ。つまり我々はやさしい条件の中でいつもプレーさせられていることになる。
もっとも、これはビジターの場合であって、メンバーなら機会のあるごとにバックティからまわっていること前述のとおり。ほかにも、コースによってはクラブハンディやオフィシャルハンディが4人トータルで40以内だと回れたりする。
では、なぜビジターにバックティを使わせないのか。そのゴルフ場のメンバー同伴でも使わせないのが普通だし、使わせることがあっても勝手にバックティからプレーするのわけにはいかず、事前にマスター室の了解をもらわなければならないのが一般的だ。プロたちも、プライベートで回る時は事前にマスター室に申請をする。勝手に使っていいというわけではない。
これはやはり、プレーが滞ってはいけないというゴルフ場側の配慮による。バックティはヤーデージが長くなるだけに難しくなり、誰にも彼にも使用を許したら、ホールごとのプレーが遅くなって大渋滞を引き起こしかねない。それでは、ゴルフ場も困るわけだ。
だから、ゴルフ場側がバックティの使用を許すのは、メンバーの中でも上級者に限るとしているところが多い。「別に制限はありません。進行にだけ気を付けていただければ大丈夫」というゴルフ場もあるが、迷惑をかけないことが前提だ。
だが、身の丈に合わない選択をするゴルファーもいる。勝手にバックティーを使用したり、申請していても明らかに実力が伴っていなかったり…。
例えば、ティショットはOB、池は当たり前で、隣のホールに行って進行が遅くなる。バックティーからプレーしているからこそ目にくし、「資格あるの?」とケンカの元になったりもする。
あるプロは「ハンデの多い人がバックティで打つと、レギュラーティと比べて景色も全然違うし、距離が長くなるのでつい力んで球が曲がってしまう。セカンドの距離も長くなりミスも多くなる。結果、プレーが遅くなってしまう」という。
だが、バックティでプレーしていると注目を集めるのも事実。「バックティからプレーしている組がいると、つい見てしまいますね」。アベレージゴルファーにとっては、いつかはバックティでプレーしたいと誰しも思っているはず。それだけ、バックティはゴルファーにとって”憧れ”なのだ。
一方こんな考え方もある。前述のプロゴルファーいわく「一般的にゴルフ場は18ホール・パー72で回れるように設計されている。パープレーで回るように挑戦することがゴルフというゲームであるならば、必ずしもバックティで回るのがかっこいいというのも違和感がある。各ゴルファーのレベルに合わせてティを選べるように距離と難易度を変えて設置してありますし、自分にとってのパープレーに挑戦することが大切なのではないでしょうか」
確かに、自分に合ったティを選んでプレーすれば老若男女、ハンデにかかわらず4人が同時に同じフィールドでプレーできるスポーツはなかなかない。それぞれの距離でパーを目指してプレーすることにゴルフの本質はあるのかもしれない。
とはいっても、やっぱりバックティから打ちたい!という夢を叶えるなら、一生懸命練習して、80台前半を目指そうではないか。
<1995年月刊ゴルフダイジェスト2月号 参照>
写真/三木崇徳