FILE5 風が吹くと必ずアゲンストになる謎
前のホールはアゲンストの風が強くて苦労した。しかし次のホールは反対方向にボールを打っていくので、大フォローになるはず、と喜んでティグラウンドに立つと、期待を裏切られるようにこちらもアゲンスト。こんな経験、少なからずありませんか?
これはなぜなんだろう。答えは、風がウズをまいているから、としか思えない。一定方向からだけ風が吹いていれば、確かに前のホールと反対方向に打っていくときには逆方向から風が吹くはずである。
しかし、にもかかわらず同じ方向から吹くということは、風がグルグルと回っている。
この風のグルグルまわりは、気象条件やゴルフ場の地形によって生じるようだが、とくに地形が曲者だと考えてよいみたいだ。近くに山があるゴルフ場では、風が山にぶつかって戻ってきて、これがグルグルまわりの原因をつくるのだろう。
また、樹木の多いゴルフ場も、樹木の途切れた場所を風が吹き抜けると、それが別の樹木帯にぶつかってはね戻される。こういうことがゴルフ場のあちこちで生じると、やはりグルグルまわりが起きやすくなってくる。海風が強く吹くゴルフ場も、注意をしなければならない。
しかし、中部銀次郎さんの″平均の法則″ではないが、ラッキーとアンラッキーは相半ばするものであり、長い目で見ればアゲンストもフォローも同じような回数でめぐってきているはずだ。
どこかのゴルフ場では、たしかアゲンストばかりだったが、別のゴルフ場ではフォローばかりの中でゴルフをやったことはなかっただろうか。
被害者意識の強いゴルファーは、フォローの中でゴルフをやったことだけすっかり忘れ、アゲンストの中での苦闘ばかりが頭に残るのかもしれない。
また飛距離の出ない人や下手な人ほどホール攻略面以外のところで風を気にするから、アゲンストが多いように感じるのかもしれない。このアタリがアゲンストの謎の本当の答えなのかも・・・。
では、どうしたら風を読むことが出来るのだろうか。「今日は風が強くてゴルフにならない」なんてミスの言い訳をしている人は、ゴルファーとして未熟である。
「風はゴルフの最大の財産だ。風が様々に変化することによってそのホールがいくつもの顔を持つことになるからだ」と言ったのは、全米ゴルフ協会の創始者でコース設計家のチャールズ・マクドナルド。
目に見えない風というハザードを攻略するには、球を打つ以外の技術が必要になる。風の向きを読み、想像力を働かせてからショットに挑む。
″風ゴルフ″でプロが考えること、見るべきこと、知っておくと得すること″風知識″を武藤俊憲プロに聞いてみた。
風知識1
打つ場所とグリーンの風向きが違ったら?
落ち際に流されるから、グリーンの風向きで判断
ホールの形状などの影響で、場所によって風向きが変わるのはよくあること。球は出だしよりも落ち際に風に流されるから、グリーン上の風向きで計算する。打つ場所は無風でも、グリーン上だけ吹いている場合もあるから要注意。
風知識2
風を体で感じながら弾道を映像でイメージする
アゲンストは横からの映像を思い浮かべる
芝を飛ばしたりして風の強さを読むとともに、球が風にどれくらい流されて、どこに落ちるかという映像を頭の中で1回イメージすることが大事。
風知識3
林間コースの風の見分け方
ホール全体が揺れていたらフォローの風
木に囲まれたホールで、もし木の上部の枝だけが揺れていたらアゲンスト。下の枝まで全体的に揺れていたらフォローの風。左側の木だけが揺れていたら右からの横風など、木の揺れ方を見ても風向きが分かる。
風知識4
鳥の飛び方で風向き判断
鳥がフワッと浮いたらアゲンストの風
鳥が前に進めずに上に浮いたらアゲンストの風。鳥の体の向きと進む方向が違ったら、横風に流されているということが分かる。
風知識5
「海風は重い」は大きな間違い
湿った風のほうが影響は少ない
ゴルファーは「海沿いの湿った風は重くて球への影響が大きい」と思っている人が多いけど、それは勘違い。「湿度が100%と0%だったら、100%の風のほうが影響は1.8%少なくなる。実際には、ほとんど影響は変わらない。
風知識6
プロはアゲンストのアプローチを残す
ピンをデットに狙っていける
ドライバーやアイアンはアゲンストの風は嫌だけど、アプローチに限っては根元を狙っていけるからアゲンストのほうがいい。プロはグリーンを外した場合は、アゲンストのアプローチが残るようにマネジメントすることがある。フォローのアプローチは転がしが無難だ。
風は、敵にもなり味方にもなる。狙い通りに球が風に乗っていったら、その嬉しさは計り知れない。風を知り、楽しむことも必要なのかもしれない。
<1995年月刊ゴルフダイジェスト5月号、2016年月刊ゴルフダイジェスト7月号参照>