直木賞作家の三好徹がアマチュアゴルファーのカリスマである中部銀次郎と対談。中部のゴルフ哲学の神髄が散りばめられた対談集、【ゴルフの大事】
中部だからこそ口にする、アマチュアとしていかにゴルフを楽しみ、心技体を磨いていくのか?その疑問に答える要素が詰まっています。
18章ならぬ、18番ホールで構成されているこの対談集を3番ホールまで、5回に渡ってご紹介します。ぜひご覧ください。
ナイスショットの確率が
高いのが最適な構え
三好 中部さんと一緒にプレーしてみて、いくつかの点で、なるほどと感心させられたことがあったし、いろいろ聞いてみたいことも出てきました。
まず第一にですね、感心させられたというか、納得するところは、やっぱりゴルフというのは基本が大切であって、それを忠実に実行していることが、中部さんのゴルフを見ていてよくわかった。
では、基本というのはなにかというと、まずアドレスですね。
中部 そうですね。これは非常に当たり前のことで、誰もが「頭では」わかっていることなんです。
ところが、実際には、かなりいいかげんというか、間違った構え方をしている人が多いんですね。
三好 確かにね。私にしたって自分の構えがごく自然で、正しいと思っているわけですよね。
中部 ところが、それが大きな勘違いをしていたとすると、もう土台が違うんだから、どんなにしてもうまく打てるわけがない。
よしんばですよ、何発かうまく当たっとしても、じゃあその確率はどうかというと、非常に低い。少なくとも自分にとって自然に構えることができて、ナイスショットする確率がその構えで一番高いというのが、その人にとっての最適の構えになると思うんです。
三好 その「自然に」というのが、なかなか難しいわけですよ。ところが中部さんのアドレスを見ていると、ホントに「自然に」という言葉通りなんだね、これが…。
中部 その人にとって自然に構えられないのは、頭デッカチになっていると思うんです。知識だけが先行して取捨選択ができないままでいる。
自分のものになっていないから、不自然なことばかりになる。構えだけ見ても目につくんです。その不自然な構えの為にスウィングをわざわざ難しくしているんだもの。
三好 でも本人たちはそれが自然だと思い込んでいる。何年もの間ね。
中部 例えばですね、ボールの位置について…。
三好 それはアドレスでのグリップの位置の決め方と共通する話ですね。アメリカ打法のように逆K字型がいいとか、青木功みたいみY字型がいいとか、いわれてますよね。その表現でいえば、中部さんの構えは、どちらでもなく、その中間になるのかな。
中部 すでに、そういう分類をしてしまうことから間違っているんですよ。だからみんな大変な誤解をしてしまう。混乱している中で、恰好良さだけで構えようとするのがいけない。
いいですか。例えばアメリカ打法。その言葉を聞くようになってもう十数年経ちますよね。
その頃からインサイドアウトという言葉が使われ、やれアウトサイドインがどうだとか、あるいはインサイドインということもひとつの論点としてあったわけです。
私が思うに、こういうことを争うというか、論点として取り上げること自体が間違っていると思うんです。
三好 どういう具合に?
中部 インサイドアウト、あるいはインサイドスクェアというのは、「頭が動いていい」といっていることと同じでしょう。
三好 物理的には、インサイドアウト、インサイドスクェアにヘッドを持っていくというのは、インパクト直後に頭が動かないとあり得ないことですね。
中部 いいですか。手を伸ばして(といってアドレスのかたちを取る)、ここにボールがあって、それでスウィング、回転するわけでしょう。
三好 その回転の中で、クラブヘッドがボールに当たった後に外に出てしまうことはあり得ない。頭を動かせば手はついていけますけどね。
中部 そうです。
三好 僕はこの言い方はインパクトからフォローにかけて、ヘッドを目標に対して放り投げる感覚で打て、を指しているので、実際のクラブヘッドの軌道としては、物理的にあり得ないと思っていた。
中部 ところがマスコミのおかげで(笑)、その受け止め方が極端になっている人が多くてね。こうなるとスウィングじゃなくなっちゃうもの。