プロの飛ばしの秘訣を”筋電図”を使って解明するこの企画、ツアー2勝の谷口拓也プロと東大の工藤先生の全面協力のもとスタートしました。
筋電図の解説とバックスウィングからインパクトまでのVol.1はコチラから
センサーは全部で10か所の筋肉を計測
「スウィング動作にかかわる、10か所の筋肉部位にセンサーを装着し、データ計測することで、スウィング中の筋活動を詳細に知ることが可能です。私はこれまでに様々なスポーツ選手やダンサー、音楽家などの筋活動を、この筋電図を使って研究してきましたが、一流といわれる選手は皆、共通した筋肉の使い方をしているんです」(工藤)
谷口拓也プロのドライバーでのヘッドスピードは50~52m/s、飛距離は300Yを誇ります。見た目ではリラックスして力が入っていないように見えるプロのスウィングですが、筋電図を計測することで、どの筋肉が、どのタイミングで、どれくらいの強さで活動しているのかを解明することができます。
それでは、早速インパクト以降の筋肉の活動を見ていきましょう。
最も使われていたのは両脚の大腿二頭筋
クラブを振るために腕は使っていなかった
実験がスタートする前、「バランスを保つための下半身の筋肉はどう動いているのか。スウィン中、もっとも動いて見える手や腕の筋肉をどう使っているのか。そこが興味深いですね」 と語っていた谷口プロ。果たして、結果はどうだったのか。
「結論を簡単に説明すると、スウィング中、もっとも大きく使われているのは、両脚の大腿二頭筋と外側広筋(太ももの表と裏の筋肉)、そして右外腹斜筋(右のわき腹)の筋肉です。つまり、下半身と体幹をエンジンにして、クラブを振っているということです」(工藤)
大腿二頭筋は太ももの裏側の太い筋肉(ハムストリングス)です。右脚は切り返してから地面をしっかりと踏みつける方向にかなりの強度で働いています。一方の左脚は右脚の活動と入れ替わるようにインパクト直前から直後にかけて大きく活動しています。
これは、Vol.1でも解説しましたが、ダウンスウィングの切り返しで右足を踏み込んで左へ体重を移動させ、インパクトでは左足で受け止めていることが分かる。
他の部位の筋活動を見ると、左右の手や腕の筋肉も、スウィング中に働いているが、決して腕でクラブは振っていないという。
「手や腕はスウィング中、遠心力やインパクトの衝撃など、外から加わる大きな力に対抗して、ひじや手首の角度、フェースの向きを保つために、瞬間的に活動しているだけなんです」(工藤)
その瞬間以外は筋肉が動いていない“脱力”した状態にあり、手や腕でクラブを上げたり、引き下ろすという活動は、筋電図からは読み取れないという。
「スウィング中はいかに手や腕の力を抜くかを意識しています。力を入れてしまうと、スムーズにクラブを上げられないし、ヘッドを速く振ることもできませんから」と谷口プロもいう。
「これはテニスやバドミントンも同じですが、プロは上体をリラックスさせ、脚や体幹を使って、ラケットを速く振っているんです。ところが、アマチュアがそれを真似ようとすると、肩から下の腕を振って、スピードを出そうとしてしまう。
日常生活では末端にあって器用に動かせる指先を使うことが多く、それが人間特有の動き、癖でもあります。ゴルフのスウィングは日常生活の動きとかけ離れているので、プロのような筋肉の使い方を、アマチュアはなかなか真似できないんです」(工藤)
バランスのとれたフィニッシュは下半身で保つ
左足一本でバランスよく立つプロのフィニッシュが脱力状態に見えるのは両太ももの筋肉でしっかり体を支えているからだ。
インパクトで右脚のパワーを受け止めた左脚はフィニッシュにかけて軸の役割をし、フィニッシュでの右脚のひと押しをしっかり支えている。
いかがですか? プロの筋肉の使い方、タイミングがお分かりいただけたでしょうか。使う瞬間とリラックスしている瞬間がよくわかりますね。
次回は30ヤードのアプローチ編をお届けします。お楽しみに~
月刊ゴルフダイジェスト7月号から一部抜粋。カメラ/増田保雄
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