北海道クラシックがまだ工事中の頃、ジャック・ニクラスが「今、北海道で造っているコースが、私が日本国内に造ったコースで一番の自信作だ。開場したら是非、プレーして欲しい」といったという話を聞いたことがあります。
この噂は広まって、北海道クラシックは新しいニクラス戦略性を持ったコースとして人気を上げてきました。
このコースには、アウトでも3ヵ所、インで5ヵ所の水際設計があります。地形はほぼ平坦、樹木も1,2メートルの柏が中心では、水際でアクセントをつけざるを得なかったのでしょう。
池を超える設計の狙いは二つ。大きく超えるか、安全に手前にレイアップする(刻む)かです。どちらを選ぶかが「戦略」です。ところがニクラスは、ここでは水面を超えることしか求めていません。
例えば6番。池の際10ヤードのエリアをブッシュ状のラフにして、レイアップを妨げています。他の池越えも、レイアップすると極端な左足下がり、つまりボールが上がらない設計になっています。チャレンジングになれと、プレーヤーを叱咤しているのです。
このコースには、左から右に40ヤード以上も横長の砲台グリーンがいくつもあります。その前にはグリーンと同じ長さのバンカーが、かなり深く、砂渡りも広くまつわりついています。
こういう構図のグリーン狙いで、ピンが右いっぱいに立てられている場合、ピンを直接狙うか、ガードバンカーを避けて花道経由で安全にボギーオンしていくかの選択を迫られます。このように選択肢をいくつも並べたニクラス戦略性が、北海道クラシックの魅力です。
難コースと思いますか。何とかなると思いますか。
2007年ゴルフダイジェスト社刊
田野辺薫「一度は回りたいニッポンの名コース」より