年々、クラブやスウィング理論は進化し続けています。それに伴って、クラブに合った握り方も少しずつではありますが変わっています。しかし、この「グリップの進化」を見落としてる人は意外に多いです。
時代に合った握り方は確かに存在します。今回は今から約40年前、青木功プロがグリップを改造したエピソードをご紹介します。
日本オープン敗北がグリップ改造の理由
青木功プロがかつてストロンググリップをスクェアの矯正して、その後、盤石の地位を築いたのは有名な話です。その時、青木プロのグリップを直した人物が、現・杉並学院のゴルフ部監督を務める鷹巣南雄プロ。ストロンググリップをなぜスクェアに直す必要があったのか。その真相を鷹巣プロに聞きました。
「青木のグリップを直すきっかけは、青木自身がフックボールを直したかったからなんだよ。俺のところに相談に来たときには、すでに優勝も何度かしていたから、『ゴルフが壊れてしまうかもしれないぞ』と言ったんだけどね」(鷹巣プロ)
現に青木プロは、大事なところで大きく左に曲げてしまうことが多々ありました。日本オープンでもその球が出てしまい負けたことも。だからこそ、青木プロは自身のゴルフが壊れてしまうかもしれない、というリスクを承知の上で、グリップ改造に着手したのです。
「青木自身はフェードにしたいという意味ではなく、単純にフックボールを直したかったんだと思う。そのときストロングに握っていたから、それをスクェアに戻しただけ。直してもさ、人間っていうのは打つ瞬間、本能的に握りやすい握り方をしてしまうもので、それで手ぬぐいで縛ってやったんだ。手が使えないものだから、昼はおにぎりを食べさせながら打ってたくらい、徹底的に体で覚えこませたんだよね」(鷹巣プロ)
青木プロは当時、自分はフック打ちだからと言っていたのですが、鷹栖プロ曰く、本来はスライサー寄りだったといいます。要するに、元来自分が振りやすいはずのスウィングに合わせた握り方に戻しただけということだったのです。
「確かにストロングやウィークといった握り方は存在するが、自分にとってのスクェアは、人それぞれ違って当たり前なんだ。今のクラブにあった握り方は確かにあるとは思うけど、それも決まりがあるわけじゃない。手の長さや指の太さなど、自分のスクェアを見つけることが最も大切なことだと思う」(鷹巣プロ)
青木プロは当時、このままでは長くトップレベルで活躍できないと感じていたのかもしれません。だからこそ失敗を恐れずにグリップの改造に取り組んだのです。
性能が進化し続ける今のクラブにどのような握り方が必要なのか。皆さんも「自分に合ったスクェアグリップ」を見つけるときなのかもしれません。
※月刊ゴルフダイジェスト2015年4月号