今でこそ「ボーケイ」を筆頭に、様々なソールのデザインのウェッジが市販されていますが、かつてはプロ自身がソールを削って、“自分仕様”にウェッジを仕上げていました。巧みなアプローチを武器に、80年代から日本ツアーで活躍した“マッシ―”こと倉本昌弘プロもその一人。当時は、ウィルソン「スタッフ J.P.カスタム」を使っていました。
当時のウェッジについて、倉本プロ本人に語ってもらいました。
当時、ソールを削る技術も求められていた
ボクは、ソールのトウとヒールを自分で削ったんです。特にヒール側はフェースを開いたときに邪魔になるところで、バウンスが当たって跳ね返っちゃう。だから落としました。それからトウ側は地面に当たらないけど、(バランスが)軽いウェッジが欲しかったんで、ヘッド重量を落とすためにもココ(ソールのトウ側)を削るのが一番です。逆に“必要なところは”はソールのセンター部分だから、そこは残してました。(倉本プロ)
「J.P.」時代に、なぜそこまでソール形状にこだわったのか?背景には「ボールの違い」がありました。
糸巻きボールだと例えば、ウェッジでフェアウェイから打って1万回転でだとして、ラフからは6000回転しかないとすると、4000回転も減っているわけです。それが今のボールだとフェアウェイから7000回転としても、ラフからは5000回転くらいする。すなわちスピン量の差が少なくて遥かにコントロールしやすくなったし、あまり小細工する必要がなくなったんです。(倉本プロ)
糸巻き時代は、ソールの“当たり”や“抜け”が少し違うだけで、スピン量=止まり方に格差が生じたので、ソールをセルフチューニングしていたのです。
現在でも、自分好みにウェッジを削るプロが多いですが、以前よりは減ってきました。アマチュアの方でも、極少数になりました。理由はボールの進化とともに、「ボーケイ」などが様々なソール形状のウェッジをラインナップして、市販でも買えるようになったことが大きな要因となっているんですね。
※月刊ゴルフダイジェスト2015年10月号