ピン・アンサーの性能について、クラブデザイナーの故・竹林隆光氏が1985年に、以下のように考察している。カーステンの設計を、同業者の精緻な観察眼で見抜いているのが興味深い。

パターはスウィートスポットに当たればジャストミートだが、フェースの先の方で打ったときは開いてしまうし、ヒール寄りで打ったときは逆に閉じてしまう。ところがアンサー(をはじめとするピンのクランクネックパター)は、シャフトの延長線上がスウィートスポットよりも手前にあるため、仮にヒール寄りで打ったときでも、シャフトがブレーキになってフェースが閉じられる量が少ないのである。

画像: 発売当時からスウィートエリアの広さがアンサーのセールスポイントだった。写真は2106年モデルの「ヴォルト・アンサー2」 写真/三木崇徳

発売当時からスウィートエリアの広さがアンサーのセールスポイントだった。写真は2106年モデルの「ヴォルト・アンサー2」 写真/三木崇徳

つまり、それだけスウィートエリアが広いというわけだ。もしシャフトの延長戦がスウィートスポットを指していると、スポットを外したときは、シャフトとスウィートスポットの交差点を軸としてヘッドが回転してしまうのである。

プロたちは「パターはヒール寄りで打った方がいい」とよく言うが、それは恐らくこのことを指しているのだろう。

また、アンサーは独特のネック形状を持っているが、ここにも大きな特徴がある。ネックは立ち上がりは垂直になっている。ところが。その先はフェース側に曲がっている。これは視覚的にオープンフェースに見せるためと思われ、非常に微妙な設計だ。

画像: 初代アンサーをトウ側から見たところ。ネックがフェース側に湾曲している

初代アンサーをトウ側から見たところ。ネックがフェース側に湾曲している

これは言わば、フィーリングの世界を数値に表したものである。経験的にはピン以前のメーカーもやってはいたが、金型で作るパターではピンが最初だろう。ネックの微妙な曲げ具合は、方向性とも大きな関連がある。

もちろん、構えたときにフェースが合っていれば問題はないが、たいていのパターは、構えたときにシャフトは、グリップ寄りが先に出ているように(ハンドファースト気味に)見えるものだ。実際にはこれが方向を狂わせやすいのである。

ところがアンサーの場合は、シャフトがフェース面と平行に近く立っているように見える。こうすることで、方向の錯覚が少なくなるという利点を生かしているわけだ。

もうひとつはシャフトの硬さだが、これは多分に日米のグリーンの違いがあるのではないだろうか。米国の方が合理的にとらえていることであり、それはパターだけでなく、クラブ全体について言えることだ。米国ではグリーンが速いためにリストをまったく使わない打ち方がベストとされている。

リストをロックして腕で振るか、あるいは肩で振るかのいずれかが主流となっている。その場合は、シャフトがたわなまいほうがリストを使わないで打ちやすいからである。アメリカの方がピンパターの使用率が高いというのもこのためだろう。ピンのパターはあらゆる面から”科学され尽くして”つくられているのだ。

以上が竹林氏の分析である。アンサーに賛辞を送った後、強いていうならば……ということで次のように欠点を上げている。「L字型などよりはフェースをスクェアに合わせにくいことだろうか……」これは使い手の感性にゆだねる個所であり、竹林氏はアンサーパターの致命的な欠点を探せなかったことを示唆しているのではないだろうか……

※チョイス1985年9月号などから再編集

This article is a sponsored article by
''.