日本女子オープンでの畑岡奈紗の優勝に象徴されるように、今ジュニアゴルフが熱い。約1000人が集まった8月末のジュニア大会でも、高校生、中学生、いや小学生も、上位は60台のスコアを連発。女子の15歳~17歳の部(高校カテゴリー)では3日間競技で12アンダーパーという優勝スコア! ジュニアゴルフの現場から、レポートしよう。
優勝者が出した「ハーフ29」
これはゴルフダイジェストが1998年から開催している「第19回ゴルフダイジェスト ジャパンジュニアカップ」での話。かつてはプロツアーの「ゴルフダイジェストトーナメント」を東名カントリークラブ(静岡)で行っていたのだが、次世代のゴルフをサポートしようと始めた。初期には古閑美保や池田勇太も子どもらしい顔でやって来ていたし、今年プロテストに受かった美形の誉れ高い森美穂が三連覇した時代もあった。
毎年夏休みの終わり、少年少女に東名カントリークラブはジャックされる。今年は8月22日(月)~27日(土)まで6日間。“子ども”というと大人は上から目線になりやすいけれど、彼らは本気でゴルフをやっている人たちである。小さいころからゴルフしているから上手いだろうね、と片づける一般の大人衆も、刺激的すぎる現場に驚くに違いない。
15歳~17歳・女子で優勝した河野杏奈(高2)は2日目、ハーフ29を出している。6連続バーディを取った。何が起きているかというと……ほとんどのホールでピンそばにつける怪物ゴルフをしているのだ。とんでもなく美しい球を打つのだ。上手くいくほど逆に不安になる日本人の特性がかつては囁かれたけれど、彼女には技術の裏付けがあり、自分を信じてどんどん行くのである。
これは大人こそ見習いたい! 8打差をつけられても「諦めない心」
そして……。2日目で12アンダーに到達していた河野杏奈に8打差もつけられていた高校1年生が、最終日に優勝を目指してスタートしていった。無理だよ……とは思わないらしい。ゴルフでは何が起こるかわからないと経験的に知っている。日本アマチュアゴルフランキング18位の後藤未有はこの日、3連続バーディ&4連続バーディなどなど、67で回ってチャンピオンに3打差まで迫ってしまった。
多くのゴルファーは、いい結果への欲にやられて崩れてしまうものだ。しかし彼女に話を聞いたところ、目の前の1打にだけ集中しているのがよくわかった。それを18ホール続けていくゴルフの極意のようなことを、表現は女子高生らしく語るのだ。
「早く上手くならなくてもいいじゃないですか」
とはいえ、ゴリゴリの選手ばかりでもない。男子12歳~14歳の部(中学クラス)の最下位は、2日間で優勝者から48打差。「公式戦じゃない楽しさがある」と言い、それぞれの位置でチャレンジをしている。1年経つと10打縮めてくるケースもあるし、みんなが発展途上。中学生時代の成田美寿々選手が1ラウンド90を超えるスコアを記録したこともあった。「早く上手くならなくてもいいじゃないですか。学校生活も楽しまなくちゃもったいないし」と彼女は笑った。
選手たちは、わりと実力関係なしに競技仲間の意識を育てている。「上手いから偉いわけじゃないぞ」と言わなければいけない時代もあったが、このゴルフ界の残念な風習も、子どもたちが正してくれるのかもしれない。
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