プロとして飛躍するきっかけは、“ゴルフ界のドン”杉原輝雄
関西出身のゴルファーと言えば、現在レギュラーツアーで活躍する藤本佳則や谷口徹、女子では森田理香子、遡れば元賞金王の前田新作などがいる。その中で最も存在感が大きいのは、やはり“ドン”杉原輝雄だ。
杉原の姿を見て育った関西出身のプロゴルファーも少なくない。井戸木鴻樹もそのひとりだ。関西の名門コース、茨木CCで研修生となり、21歳でプロに転向。勝てない日々が続いたが、24歳のとき、杉原一家の合宿に参加したことをきっかけに成績が上がる。
身長167センチの井戸木は、162センチの杉原と同様に体格に恵まれた選手ではない。合宿では、いわば“同タイプ”の杉原から多くを吸収したのであろう。28歳で迎えた1990年「関西プロ選手権」では、その杉原を逆転して初優勝を飾った。
関西から全国区のプロゴルファーに
関西では長年ゴルフ番組に出演しており、「ドッキー」という愛称で親しまれ、アマチュアゴルファーから絶大な支持を得ていた井戸木。そんな彼も13年「全米シニアプロ」を制したことで、全国区の選手となる。
日本人選手では青木功が同ツアー(チャンピオンズツアー)で9勝を果たしているが、メジャー大会を制したのは井戸木が初めて。「ノーコック打法」と呼ばれる飛距離よりも正確性を重視したスウィングで、レギュラーツアー時代からフェアウェイキープ率は常に上位に名を連ねた。「全米シニアプロ」でも、その“正確無比なドライバーショット”を生かし、3日目まで上位をキープ。最終日には、「65」をマークして逆転で優勝を決めた。
ウッドの達人であり、“日本一の長尺使い”
井戸木のセッティングを見ると、アイアンは6番からでウッドを6本入れた「六本木セッティング」。“ウッドの達人”と称されるように、フェアウェイウッドを巧みに使って勝利を重ねてきた。
飛距離よりも正確性で戦ってきた井戸木ではあるが、飛距離を諦めているわけではない。
井戸木曰く、「やっぱり飛距離はほしいわな(笑)。死ぬまで飛距離への執着心は消えませんわ。だから長尺ドライバーを使う。今は47.75インチのドライバー。バチンっと当たったときは280ヤードは飛びます」。
長尺をうまく使いこなすコツは、「遠心力を生かすこと」だと井戸木は話す。アマチュアは振り過ぎているという指摘も。ゆっくりと、遠心力に身をゆだね、切り返しの「間」を上手く使うことが大切だという。
井戸木のドライバーショット
そんな井戸木も本日11月2日で55歳の誕生日を迎えた。16年「全英シニア」でも、2日目まで首位を守る活躍で、メジャー2勝目も十分ありえる。今後も、メジャーでどんな戦いぶりを見せてくれるのか、楽しみだ。