アマチュア時代は“エリートコース”を進んだ
笠りつ子はジュニア時代、父がコーチを務める「坂田ジュニアゴルフ塾・熊本校」で腕を磨いた。多数の女子プロを輩出した名門・坂田塾、その元祖ともいえる熊本校は、1期生に古閑美保、4期生の上田桃子は笠の1学年上にあたる。
中学2年時に「九州ジュニア」で優勝。その後も、古閑美保、上田桃子が進んだ東海大学付属第二高校に進学し、1年時には「九州女子アマ」を当時の最年少で制覇。いわゆる“エリートコース”を笠は歩んできたわけだ。
父とともに戦ってきたプロ人生
もともと笠は、ゴルフ場を経営している父・清也の影響でゴルフを始めた。兄・哲郎もプロゴルファーであり、ゴルフ一家に育ったのだ。2006年のプロ転向後は父がキャディを務め、二人三脚で戦ってきた。2010年に自身初のシード権を獲得し、2011年「ニトリレディス」にはプロ初優勝を果たした。
余計な動きがないシンプルなスウィング
笠のスウィングの最大の特徴と言えば、「ノーコック」。手の動きを極力使わず、鋭いボディターンで飛ばしている。余計な動きがないために、正確なショットを打つことができる。パーオン率2位、フェアウェイキープ率5位などショットに関する指標では軒並み上位にランクしている(2016年11月4日現在)。
「ノーコック打法」は、飛距離よりも方向性を重視したスウィング。しかし笠は、飛距離でも高いパフォーマンスを発揮している。強靭な下半身を土台として、上体の鋭い回転力が十分な飛距離を生んでいるのだ。
片山晋呉のオリンピック出場に大きな刺激を受けた
今年の笠の活躍について、女子ツアーに詳しいゴルフライターの出島正登氏に聞いてみた。
「今年の始めに、彼女のスマートフォンのホーム画面の壁紙画像を見せてもらったんですが、そこに『獲得賞金1億円突破』という文字が書いてあったんです。それが高いモチベーションになっていたと思います。それをクリアした今、『賞金王』に変えているかもしれませんね」(出島氏・以下同)。
また今年開催されたオリンピックも笠に大きな影響を与えたようだ。
「今年片山(晋呉)プロがオリンピックの男子代表になり、仲間内で壮行会を開いたんです。そこに親交のある笠さんも参加して、五輪ジャケットを着せてもらったそうです。その時彼女は『日本代表』というものを凄く身近に感じたようで、いつか私も日本代表として戦いたい、という思いがより強くなったようですね」。
韓国勢が上位にひしめく賞金ランキングで、笠は現在日本人最上位となる3位。ツアーでは、“日本代表”として戦っている。
現在賞金ランク1位のイ・ボミと差は約3300万円。終盤戦は高額賞金の大会が多く、賞金女王の可能性はまだまだある。2013年以来となる日本人賞金女王をぜひとも期待したい。