我孫子流を知るにはバンカーショットから
メジャー9勝のゲーリー・プレーヤーがアプローチを教わったというほど、林由郎はショートゲームに秀でていた。その影響からか青木功や尾崎将司などの弟子たちもバンカーやアプローチの名手が多い。「ネオ我孫子流」を聞く前に、まずはその元祖である「我孫子流」のバンカーショットを教えてもらった。
我孫子流バンカーショットのポイントは2つあるという。1つは「クラブは高いところから低いところに向けて振る」もう1つは「左サイドに壁を作ってヘッドを加速させる」というものだそうだ。林由寿プロにくわしくきかせてもらった。
手首のスナップを使って球をつかまえて飛ばすのが元祖・我孫子流
「極端に表現すると左サイドを止めてクラブを加速させるのが我孫子流の打ち方です」と、右足つま先を外側に向けて素振りをして見せてくれた林プロ。記事冒頭に挙げた林由郎のインパクトをちょっと思わせる動きだ。
「我孫子流の極意は、手首のスナップにあったようです。そして、手首のスナップを使うためには左サイドにしっかり壁を作る必要があったんです。そのせいか、祖父・由郎の左の太ももは筋肉で隆々と盛り上がっていました」
右足つま先を極端に外側に向けると自然に左サイドに壁ができるので、一度体験してみるといいだろう。特にヘッドの走らせ方がわからない人にオススメだ。
「ネオ・我孫子流」は遠心力と重力を効率よく使う
クラブを高いところから低いところに振るというシンプルな理念のもと、左サイドに壁をつくってヘッドを走らせる「我孫子流」。それはシンプルであるがゆえに奥が深く、多分にプロの奥義的ものであった。それを現代のクラブに合うように、かつ誰でも感覚をつかめるよう進化させたのが林由寿プロの「ネオ・我孫子流」。ここからは、「ネオ・我孫子流」について詳しく聞いていこう。
「前回お教えした、50ヤードをパターで打つドリルを思い出してください。50ヤードを打つ際、まずは肩の上下動だけで打ってもらい、そこに足踏みを加えることで、スウィングの動きへと繋がっていくと説明しました。今回は、そのさらに延長線上。具体的には、肩の上下動と足踏みの動き、そこに“重力”と“遠心力”を加えれば、それでスウィングが完成するんです」
ハンマー投げのウェートバッグを使うドリル
様々な練習器具やドリルを使って正しい感覚を伝えるのが林プロのレッスンの特徴だ。ほかにも、ネオ・我孫子流ならではのドリルを紹介してもらおう。
「国際武道大学の眞鍋芳明准教授と考案したドリルを紹介します。重さ5キロあるハンマー投げの練習用ウェートバッグを使ったドリルです。このとき、両肩と両腕とバッグで作る長方形をキープしながら振るのがポイントです」
「このドリルで覚えて欲しいポイントはふたつあります。まずは切り返してダウンスウィングに入る際、重力に引っ張られたバッグと体が引っ張り合う感覚。もうひとつは、今度はフォロー側で遠心力に引っ張られたバッグと体が引っ張り合う感覚です。切り返しでの正しい体の使い方、フォロー側では正しいヘッドの加速させ方、すなわち重力と遠心力の使い方が感覚的に理解できると思います」
実際にバッグを使うのは難しいが、2リットルのペットボトルに水を入れて代用することも可能だとか。それなら自宅で振ってみるのもお勧めの練習法になりそうだ。十分な安全が確保できるなら、それをターゲット方向に放り投げると、より感覚がつかめるとか。
名手・林由郎の孫である林由寿プロによる「ネオ・我孫子流」ゴルフ。それは、体力がない人でも飛ばせる、重力と遠心力を活かしきるためのメソッドだった。昭和の名手の秘伝の技を、ぜひ体験してみよう!