真ん中やわらか。先と手元はカッチカチ。硬さの「段差」でよくしなる!
そのシャフトの名前は「メビウス」。一体いかなるシャフトなのか。なぜ、ワンフレックス、ワンウェートなのか。営業本部長の岩城昌伯さんに聞いた。
「まずはシャフトの特徴から説明しましょう。一言でいえば、『手元と先が硬く、真ん中が大きくしなる』ということになります。手元と先はほとんど“棒”というほど硬く、反対に中間部は一般的なRシャフトよりさらに軟らかい、Aフレックス程度の硬さ(振動数210前後)しかありません。このように、先・手元と中間部の硬さの“段差”が激しいことで、大きくしなるシャフトとなっています。このしなりがウリなので、マルチフレックス(フレックスの設定がひとつだけ)での販売なんです」
なるほど、これは思った以上に個性的だ。65グラムという重さなのは、大きくしなったシャフトがしなり戻ってインパクトを迎えた際、それより軽いとインパクトで当たり負け、十分なエネルギーが得られないからだそうだ。65グラムは、当たり負けが起きないギリギリの重量なのだという。
よくしなるけど、トルクは少ない。だからヘッドの個性が生きる
素材に目をやると、80トンの高弾性カーボンが使われている。そのことにより、大きくしなる一方で、シャフトのねじれを表すトルクの数値は極めて低い(3.1度)。しなるが、ねじれない。これはどういうことなのか?
「トルクを絞ると、基本的にはフェースの開閉が起こりにくくなります。このシャフトは基本的には“つかまる”シャフトなので、フェースは開閉しないほうがいいんです。また、トルクを絞ると、ヘッドの違いによる性能差が出やすくなります。このシャフトは全国のゴルフ工房さんで販売されるモデルです。工房さんによって一押しのヘッドは異なりますから、その個性がより出やすくなるというわけです」(同・岩城さん)
「自分でシャフトをしならせられる人には、必要がない」
実際に打ってみよう。試打者はみんなのゴルフダイジェスト編集部員O。平均スコア90台。ヘッドスピード41m/s。持ち球はスライスという、ゴルフ場で石を投げれば当たるような平均的ゴルファーだ。
まず渡されたのはプロギアの工房専用モデル「TUNE01」が装着されたもの。スウィングしてみると、なるほど切り返しで大きくシャフトがしなるのを感じることができる。そのためダウンスウィングで打ち急ぐことがなく、日頃から意識している下半身リードをする時間をシャフトが与えてくれるという印象で、一球目からナイスショットを放つことができた。
前出の岩城さんによれば、このシャフトは「自分でシャフトをしならせられる人には必要がない」のだという。上級者は自分でシャフトをしならせることができる。そういう人にとっては機能がトゥーマッチになってしまうというわけだ。反対に、筆者を含めた大多数の「シャフトのしならせ方のわからない」ゴルファーにとって、このシャフトは合う可能性が高くなる。
組み合わせるヘッドで「振り心地」が大きく変わるのも面白い
さて、面白かったのはメビウスとダンロップの「ゼクシオ9」の組み合わせだ。スウィングしてみると、「TUNE01」をスウィングした時と比べ、振り心地がわずかに、しかし決定的に変化している。
「これはヘッドの設計の違いが大きいんです。ゼクシオのヘッドは、プロギアのヘッドに比べ、シャフトの“飲み込み(ヘッド内部への差し込み量)”が大きいんです。いくら硬い設定とはいえ、シャフト先端はグリップ側に比べてしなりが大きい部分。そこを大きくヘッド内部に入れるため、ゼクシオに差した場合はしなりが少なく感じるのです」
勘違いして欲しくないのは、しなりが少ないからダメ、というわけではないという点だ。試打した印象としては、TUNE01装着のほうは「大きくしなって、ゆったり振れる」という印象。ゼクシオ装着のほうは「適度にしなって、鋭く叩ける」という感じ。あくまでも振り心地の印象が変化するだけで、あとは好みの問題だ。どちらをチョイスするかは、販売する工房それぞれにフィロソフィーがあろうし、最終的にはユーザーの好みの問題ともる。そこはある意味「おまかせ」ということだろう。
価格は8万円+税と決して安くはないが、その性能は唯一無二。合う人にはすごく合うシャフトだと思われるので、工房ユーザーの方は行きつけのお店の店主に尋ねてみるといいかもしれない。