体重移動ではなく地面を踏み込む力で飛ばす
まずはトーマスとマキロイのインパクト画像を見てみよう。見てもらいたいのはズバリ「左足」。インパクトで左足がピーンと伸び、まるでその場でジャンプするような動きをしているのがわかるはずだ。
「トップからの切り返しで左ひざを曲げて、しっかり荷重した後に地面を思い切り踏み込んでひざを伸ばすんです。この動きでクラブを加速させるんです」(グレゴリー)
なぜ、トーマスやマキロイは、ジャンプするような足使いをするのだろうか?
「スチールシャフトにパーシモンの時代からカーボンシャフトとチタンヘッドに移り変わり、スウィングは大きく変化しました。それは、体重移動から床反力を使った高速回転のスウィングへの変化です。トーマスやマキロイは、まさにその動きを取り入れて、飛ばしているのです」
そう語るのは、スウィング中の体重移動や、どれくらいの力で地面を踏み込んだかを測定できるプレッシャーマット「smart2move」(以降:S2M)のインストラクターであるグレゴリー・レブラ氏。
「以前は、飛ばそうと思ったら左右に体重移動するのが当たり前でした。しかし、最近のトッププロのスウィングを解析すると、トップからの切り返しで左ひざを曲げて地面に対してしっかり踏み込み、そのあとにしっかり左ひざを伸ばしています。切り返しで踏み込むことで、地面と反発するエネルギー『床反力』を得ることができます。それを、スウィングの回転スピードに転換しているのです」(レブラ氏)
床反力を使う(左足踏み込むんで伸ばす)ことで腰は回転しブロックされる。それによりヘッドスピードが一気に上がり、飛ばしに直結しているのだという。
それはプレッシャーマット「S2M」の計測結果に如実に現れる。まずは一般的なアマチュアがスウィングした結果を見てみよう。
まずは左右への体重移動を見てみよう(下画像)。黄色の点とその軌跡はゴルファーの重心の動きをトレースしている。黄色の点はフィニッシュの位置。アドレスからスタートして一度左に動いたあとにトップで右かかとの内側へと移動、切り返しで左へ移動しフィニッシュへとつながっている。
次に、下の波形を見てみよう。赤の波形は右足、青の波形は左足の荷重を表している。黄色の波形は両足の合計だ。横軸は左側からアドレスーフィニッシュまでの時間、縦軸は荷重の度合いを表している。ざっくりと言うと、バックスウィングでは右足、インパクトで左足にグッと踏み込んでいるのがわかる。
これ、実は平均飛距離230〜240ヤード、ハンディキャップ9の上級者のデータ。右から左へ、タイミングも含め一見“教科書どおり”の体重移動に思えるが、これは必ずしも現代のクラブで飛ばせるスウィングではないというのだ。
「床反力」の大きさが飛ばしの原動力
このゴルファーがトーマスやマキロイに代表される左足を伸ばす動きを取り入れたらどうなるか。レブラ氏のレッスンを受けた後のデータを見てみよう。
まずは体重移動から見てみよう。一見して、右足に体重移動していないのがわかる。これは「右に体重移動しないように」とレッスンされたわけではなく、トップからの切り返しで左ひざに荷重を感じて、インパクト前に左ひざを伸ばすように意識してスウィングすると自然にこうなるのだという。
最大の注目は下の荷重を表す波形だ。インパクト直前に左足で地面を強く踏み込み、インパクトの瞬間には荷重がほぼ「ゼロ」になっている。つまり、ジャンプしながらインパクトを迎えているということだ。黄色い波形で表される地面への荷重の度合いもレッスン前よりアップしている。どちらも地面を踏み込むことで得られる床反力を使えている証拠だ。
インパクトで左ひざを伸ばすためには、その前にしっかり左足に荷重しなければならない。そのためにはトップで右に重心を移動し過ぎないことがポイントなんだとか。
「床半力を利用して振ると、ヘッドスピードがアップするだけでなく入射角やクラブの軌道が安定する効果もあります。今どきのドライバーで飛ばすには床反力を使って回転のスピードを上げて飛ばす、この方法がベストなのです」(レブラ氏)
今回体験したアマチュアゴルファーも、短い時間で如実に効果が現れた。ダウンで左足に踏み込み、インパクトでピーンと伸ばす。この動きを取り入れれば、あなたもジャスティン・トーマスみたいに飛ばせる……かも。
協力/PGST