アイアンのスピンが1000回転減る。そこには意外なメリットがあった
「ドライバーでは低スピンにして飛距離を稼ぎ、反対にアプローチではスピンを最大化したい。そのためには5層構造が必要なんです」と語るのは、テーラーメイドの最高技術責任者であるブノア・ヴィンセント氏。
ヴィンセント氏によれば、今回の「TP5」ボールは、他者のプロ使用ボール、いわゆるツアーボールとは「まったく異なる」性能を持つという。氏によれば、一般的にアイアンのスピン量は「番手の数字×1000回転(RPM)」がツアー基準。5番アイアンなら5000回転、6番なら6000回転がひとつの目安になるというのだが、このアイアンで打つと、6番アイアンで5000回転と、約1000回転ほどスピンが減るという。
アイアンのスピンが減ったらボールが止まらないのでは? と心配になるが、ヴィンセント氏によれば、「グリーン上でボールが止まるかどうかを決めるのは、ボールのスピン量と、ボールの降下角度のふたつです。TP5ボールは、スピンが減る分だけ空気抵抗も減り、弾道の頂点が通常よりも先に行くことで、ボールの降下角度が急になるため、スピンが減っても問題なく止まります」とのこと。スピンが減ることで風の影響を受けにくく、曲がりにくいというメリットもあるという。
「60m/秒で打ち出されたボールは、ドラッグ=空気抵抗により、弾道の頂点付近で30m/秒くらいまで減速します。この空気抵抗を軽減させることができれば、ボール初速をキープしやすくなります。今回のTP5xボールは、秒速60メートルで打ち出されたボールが30メートルに減速するところを。32、33メートルまでキープできます。その結果、頂点が先に行く。つまり、飛ぶんです」(ヴィンセント氏)
「2012年まで、3番ウッドのスピン量は4000回転が基準でした。しかし、今は3000回転が基準になっています。なぜそうなったかといえば、テーラーメイドのRBZが登場したからです。今回のTP5の登場も、RBZの登場と同じインパクトをもたらすとおもいます」とヴィンセント氏は胸を張る。プロ限定の話かと思いきや、一般ゴルファーでもその恩恵をこうむれるという。
ガルシアは「TP5」。ラームは「TP5x」。すでに世界で2勝を挙げている
他の多くのツアーボール同様、この5層構造のボールも「TP5」と「TP5x」の2種類がラインナップ。「TP5」はよりソフトな打感が得られ、「TP5x」ほどではないものの十分な低スピン効果が得られるという。どちらもアプローチのスピン量は犠牲にしてないという。
すでに契約プロのセルヒオ・ガルシアがTP5ボールを使用して、ジョン・ラームがTP5xボールを使用して勝利を挙げている。同社の看板プロであるジェイソン・デイ、ダスティン・ジョンソン、ジャスティン・ローズらはTP5xを使用するという。
ツアーボールのことを「スピン系ボール」と言ったりもするが、アプローチを除けばこのボールは「低スピン系ツアーボール」と言えそう。激化の一途をたどるツアーボール戦線に現れた新たなる刺客。2017年4月上旬の発売を楽しみに待ちたい。
最後にオマケ情報だが、同社のドライバー「M1 440」と「TP5x」の組み合わせは、ヴィンセント氏いわく「この惑星でもっともスピンが少なくなる組み合わせ」とのこと!