やさしいパターといえば、ネオマレットと呼ばれる大型モデルが代名詞。だが、プロの多くはなぜかL字やアンサー型など、昔ながらの形状のパターを使用している。マレットやネオマレットが簡単なパターではなく、むしろ難しいからプロが敬遠しているのだとしたら……!? おなじみ濱部浩一教授が、形状のフシギに迫った!

マレット・ネオマレットのパターって本当にいいの?

昔のパターは、主に「アンサー型」、「L字」、「マレット型」に分類されます。この中でもっとも操作性や感覚を重視する上級者に向くとされるL字タイプは、少し低重心に進化しつつ、現代も残っています。次いでアンサー(ピン)タイプもプロや上級者から人気。こちらに関しては、約半世紀前のパターの形がほぼそのまま継承されています。

一方で、「マレット」とマレットの進化系である「ネオマレット」は、バラエティに富んだ形で市場の2/3以上を占めている印象です。その売り文句は「オートマティック」とか「直進性重視」とか、「慣性モーメントが高くミスヒットに強い」などであり、「一般アマチュアやパターが下手な人はマレットやネオマレットを選びなさい」と言わんばかり。でも、果たして本当にそうでしょうか?

画像: 日本獣医生命科学大学の濱部教授。動作解析の専門家であり、パッティングの転がりを研究テーマのひとつとしている

日本獣医生命科学大学の濱部教授。動作解析の専門家であり、パッティングの転がりを研究テーマのひとつとしている

そもそも操作性重視って何でしょう? プロや上級者がパッティングをする際にフェースを開いたり、閉じたりして操作しているというのでしょうか? それとも、加速の度合いを操作したり、インパクトポイントを操作したりしている? 答えはいずれも「ノー」です。

パターの名手は“再現性”が高い

プロやパターの上手いプレイヤーのパッティングを分析すると、「再現性の高さ」が際だっていることがわかります。たとえば、「アウトサイドイン軌道」で打ったりするプロもいれば、「フェースを開いて構えて、インパクトでクローズに打つ」プロもいるし、「インサイドアウト」に打ったりするプロもいます。

ただ、名手に共通しているのは「インパクトポイントの正確性=ほぼ同じ場所(芯に近い場所)でヒットする」ことと、「ストローク軌道が毎回同じ=再現性が高い」であるということ。自由自在に打点を操ったりしているわけではなく、“毎回同じ”を積み重ねられるのが、名手の条件と言えそうなんです。

そして、そんな名手たちの多くは、L字(L字マレット)やアンサー型を使い、マレットやネオマレットを使っていません。それはなぜでしょうか? それはマレットやネオマレットがハッキリ言って「使いにくい」からです。

なぜ使いにくいのか? その理由はズバリ、パターのバランスにあります。

パターのバランスはその昔、Bバランスが主流でした。重くてもCバランスぐらいまでで、Aバランスもあったくらいです。ところが、慣性モーメント理論(慣性モーメントの数字が大きい=動き出しに大きな力が必要、ミスヒットに強くなる)が出てきて以降、パターヘッドがどんどん重くなり、今やDバランスは当たり前、EやFバランスまである有様となっています。

画像: 濱部教授の研究室には、さまざまなパターがA〜Fのバランスで分類されている。A→Fの順で、ヘッドのバランスが重い

濱部教授の研究室には、さまざまなパターがA〜Fのバランスで分類されている。A→Fの順で、ヘッドのバランスが重い

ヘッドが重いと、何が起きるか?

ヘッドが重い(バランスが重い)パターはテークバックをする際にヘッドがその場所(アドレスの位置)に留まろうとします。つまり、手や腕の動きにシンクロしてヘッドがスムーズに右に動いてくれないのです。まず、そこで手の動きとズレが起きやすくなります。

また、手の動きに少し遅れて、渋々ヘッドが右に動き出したとしても、今度は一度右に動き出したヘッドが右へ右へと安定して動こうとするので、切り返しの際によほど待って(=ゆっくり切り返して)あげないとスムーズに切り返せません。一般のアマチュアにゆっくりとした切り返しはなかなかできないので、そこでもズレが生じることになります。

ヘッドが重いD~Fバランスのパターには、もちろんメリットもあります。ダウンスイングに入ってからは確かにヘッドが重いほうが直進性が高くなるし、インパクトでミスヒットした際にヘッドが回転してフェースの向きが狂う率も少なくなるのです。

画像: 最近の主流になっているオートマチックなパターだが……

最近の主流になっているオートマチックなパターだが……

しかし、その前にテークバックのスタートでズレる可能性が高く、切り返しでも手とシンクロしないでワンテンポ遅れるリスクがあります。つまり……難しすぎてプロは使わない!?

では、どうすればいいか。対処法は次回お伝えしましょう。

写真提供/濱部浩一

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