PGAツアーのトッププレーヤーも使う、テーラーメイドの人気ドライバー「M1」。このモデルの特徴は、スライド式のウェート(2つ)を動かして球筋を変化させられる点。なのだが、みなさんはこのウェートが「外せる」ことを知っているだろうか? みんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファーの中村修が、「M1 460」(2017年モデル、ロフト10.5度)のウェートをいじり倒した!

ウェートふたつで約30グラム。それを外すとヘッド性能は激変する

「M1のウェートって、1個14.5グラムあるんです。それを動かすことで弾道を調整するわけですが、それを“外す”とさらに劇的な効果が得られるみたいですよ」

という口コミを編集部にもたらしたプロゴルファー・中村修。そんな面白そうな話を聞いたらやらずにはいられないのが“みんゴル用具班”。メーカーから怒られるかもしれないが、いそいそとテストを開始した。

さて、M1のウェートをいろいろ入れ替えてテストする前に、まずは基準となるスタンダードポジション(購入したときと同じ設定)のままヘッドスピード45〜47メートル/秒で5球ずつ試打し、弾道を計測。以下のような結果となった。

画像: 試打は最新鋭の設備とゆったりとした空間が魅力のパフォーマンスゴルフスタジオ(東京・新小岩)で実施した

試打は最新鋭の設備とゆったりとした空間が魅力のパフォーマンスゴルフスタジオ(東京・新小岩)で実施した

キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
238Y 255Y 14.0度 65.1m/s 2240rpm
235Y 254Y 18.9度 62.2m/s 2678rpm
237Y 259Y 17.6度 62.4m/s 2444rpm
215Y 228Y 17.2度 60.1m/s 2819rpm
234Y 255Y 18.1度 62.3m/s 2391rpm

「ヘッドの重さがあって、大きなエネルギーをボールにぶつけられます。しかも重心が低いので、スピンが少ない。力強い弾道で球を前へ飛ばせるドライバーです。世界のトッププロが愛用するのもうなずけますね」(中村、以下同)

画像: これがスタンダードポジション。無論、いい球が出ます

これがスタンダードポジション。無論、いい球が出ます

実際、中村自身何度も試打しているおなじみのクラブであり、典型的な高打ち出し・低スピン弾道で、安定して飛ばしていた。とはいえ、M1がいいドライバーなのはすでに知っている。今回は、そのヘッドの可能性をさらに探ろうというのが企画の趣旨だ。

前のウェート外してみたら、安定感ダウン&一発の飛びアップのピーキー仕様に

ここからが本題。続いて、フェース側のウェートを外して、後方のウェートはスタンダードポジションのままテストをした。さすがに1球目はミスが出たが、2球目からはボール初速がアップして飛距離を伸ばした。その大きなポイントは、ヘッドが軽くなってヘッドスピードが上がったことだという。

画像: 「前」のウェートを外してみた。ヘッドの重さは14.5グラム減で、総重量は200グラム台に

「前」のウェートを外してみた。ヘッドの重さは14.5グラム減で、総重量は200グラム台に

「やはりヘッドが軽く感じます。クラブの重量が300グラム台から200グラム台になって振りやすくなるし、バランス(スウィングウェート)も軽くなりますが、そのデメリットは感じません。憧れていた『M1』を買ったはいいけど、重くて振り切れない、ハードで使いこなせないという人は、このポジションを試してみる価値アリです」

弾道データを見てみると、スタンダードポジションに比べ、安定度がダウンし、それと引き換えに一発の飛びが伸びている。スタンダードでは250ヤード台後半で安定していた飛距離が、270ヤード台にまで達している“一撃”もあった。

キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
228Y 241Y 18.4度 62.9m/s 3820rpm
244Y 252Y 13.8度 66.0m/s 3474rpm
242Y 251Y 14.5度 65.7m/s 3521rpm
249Y 272Y 12.8度 66.8m/s 1721rpm
245Y 269Y 12.1度 65.5m/s 2434rpm

後方のウェート“マシマシ”。予想通りの高弾道!

画像: 後ろに倍付け。予想通り、思いっきり球が上がります

後ろに倍付け。予想通り、思いっきり球が上がります

今度は、「前」のウェートを取り外して「後ろ」に取り付けた、つまり「後ろ」のウェートを2倍に増量した“超・深重心”のセッティングだ。その弾道データを見ると、打ち出し角が高くなってスピン量が増えたのが一目瞭然。

キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
239Y 254Y 16.1度 65.0m/s 3634rpm
235Y 249Y 17.3度 64.4m/s 3720rpm
222Y 233Y 20.2度 62.2m/s 3956rpm
242Y 267Y 16.1度 63.4m/s 2035rpm
223Y 231Y 20.2度 60.4m/s 3113rpm

「まさにインパクトでヘッドの“お尻”が下がって、打ち出しが高くなる深重心効果ですね。球が上がらない人やキャリー不足の人にはオススメできます。球を高くするにはロフトを寝かす手もありますが、そうするとフェースが左を向いてしまい球がつかまり過ぎることもありますから。また、やはりウェートを2つ取り付けてヘッドの重量が戻ったことで、インパクトで“バチッ”という力強い音がするし、シャフトのしなりを使って飛ばせます」

「全外し」の結果はまさかの……!?

ここまできたら「どうせなら!」というノリで、ウェートを2つとも外して打ってみた。ヘッドの特性は大きく変化し、作り手の意図からかけ離れている。まさに禁じ手ともいえるチューニングであり芳しい結果は期待できない……と思いきや、初球にミスは出たものの、ヘッドスピードがグンとハネ上がったことでボール初速が伸びて“今日イチ”の飛びが!

「ワッグルしたときからヘッドの重さをまったく感じません(笑)。まるでヘッド側を持ってクラブを振ってる感覚。そのぶんだけ、ヘッドを“ビュン”と高速で振れます。“重さ”を使って打っていたのが“スピード”で飛ばすクラブになりました。ただしヘッドがかなり軽くなったので、フェースの下目に当たりやすくなりました。打ち出しが低くなったのは、ウェートを外したことで深重心効果がなくなったからでしょう」

画像: 全部外してみた

全部外してみた

キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
230Y 241Y 10.5度 64.3m/s 3297rpm
246Y 266Y 10.7度 66.9m/s 3282rpm
253Y 262Y 11.1度 68.1m/s 3289rpm
253Y 269Y 10.9度 67.6m/s 2034rpm
246Y 279Y 10.1度 66.6m/s 1892rpm

ヘッドは感じられない。シャフトのしなりも感じられない。衝突のエネルギーも安定しない。球筋も安定しない。だが、一発の飛びがあったのもまた事実。ドラコン用のクラブのようなフィーリングに近づくイメージだ。

ウェートが変わるとスウィングも変わってしまう!?

4タイプのウェートポジションで打ち比べた結果、打ち出し高さ=インパクトロフトに違いが見られた。ウェートをすべて外すとロフト通りの高さとなり、後方の最後尾に2つのウェートを付けるとインパクトロフトが最も大きくなり、スタンダードポジションと後方ウェートの場合はインパクトロフトがやや大きくなった。重心深度と打ち出し高さがいかに強く結びついているかがハッキリしたカタチだ。

画像: 後方ウェートは、インパクトでお尻が下がり、ロフトが増える。つまり、球が高くなりやすい

後方ウェートは、インパクトでお尻が下がり、ロフトが増える。つまり、球が高くなりやすい

さらに、ウェートのアリ・ナシによって、スウィングにも大きな影響を与えると中村は言う。

「切り返しのタイミングが大きく変わってきますね。重いものを振るスウィングと軽いものを振るスィングでは”間”の取り方やテンポが変わってきます。ウェートが2つ付いていると、ヘッドの重さによって切り返しでクラブがやや遅れて“間”や“タメ”ができて、シャフトのしなり戻りでインパクトするイメージ。ハンマーのように、重いモノをボールにぶつける感覚です。一方では、ウェートがナシでヘッドが軽くなるとテンポは速くなり、切り返しからいきなり加速して、クラブと体が同調したまま一気にインパクトを迎えます。フォロー側ではなく、インパクトの瞬間に“ビュン”という音を鳴らすように振るイメージ。だからヘッドスピードは上がります」

画像: ウェートを外すと、トップで間を作らずに振る、早いリズムのスウィングになりやすい

ウェートを外すと、トップで間を作らずに振る、早いリズムのスウィングになりやすい

クラブの重さを利用して打ちたい人や切り返しの“間”や“タメ”の感覚を大事にする人はウェート2つの「重ヘッド」が、スウィングのリズムが早い人やクラブを速く振り抜いて飛ばしたい人はウェートナシの「軽ヘッド」が合うということだ。

ただ、今回の“改造”は、メーカーのマニュアルには載ってないあくまで邪道の改造であり、それによってクラブが破損した場合などは、正規の保証を受けられない可能性もある。試してみる際は、その辺りをよく理解した上で、慎重に行おう。

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