石川遼が直面する厳しい現状
2015-2016シーズンを故障で途中離脱した石川は、今シーズン公傷制度が適用され20試合限定で出場権が与えられた。そのなかで成績を出し、フェデックスカップのポイントランクをシードレベルに上げる必要があるのだが現状は厳しい。
出場できるのが今週(2017年7月27〜30日)のRBCカナディアンオープンを含め2試合。来季のシード権獲得には325ポイント前後が必要だが、ここのところ予選落ちが続いていることもあり、現在137ポイント(171位)にとどまっている。残り2試合で200ポイント近く上乗せするには少なくともどちらかで3位以内に入らなければならず、厳しい状況といえそうだ。
シードを落とせば下部ツアーとの入れ替え戦に出場し、4試合で上位25位以内に入らなければ来季の米ツアーフル参戦の道は閉ざされる。
プロ入りする直前の松山は石川について「常に自分の先を行っている存在。スウィングは自分とは比べものにならないくらいきれい。こちらはいつも追いかける立場」と語っていた。
その松山はいまや世界ランク、賞金ランク、フェデックスカップのポイントランクすべて3位につけ、ゴルフ界を代表するビッグネームに成長した。
今季2勝を上げ600万ドル(約6億7千万円)以上を獲得している松山に対し石川は20分の1の30万ドル(3千万円強)。なぜこれほど差が開いてしまったのか?
そこには松山がデビュー前に語っていた石川の「きれいなスウィング」に鍵が隠されているような気がする。松山は自らのスウィングを「汚い」と評したが、言い換えるとそれは形ではなく、いかに効率よく自分に合った振り方をするかを重視した結果ともいえる。
一方、石川は米ツアーでさまざまな選手のスウィングを見て「ああ振りたい」「こう振りたい」と目移りしてきた事実がある。自分に必要なのは何か? を追求するより、“カッコいい”スウィングを目指したことが2人の差を広げた原因の一端に思えてならない。
日本に戻ってくるのもあり?
米ツアーは厳しい。普通に振って300ヤード飛ぶのは当たり前の世界。昔は飛べば曲がるが定説だったが、最近は飛んで曲がらない選手ばかり。しかもダスティン・ジョンソンのような大柄な飛ばし屋も、実は小技が滅法上手い。
石川の平均飛距離287.0ヤード。だが134位という数字はさほど問題ではない。飛ばないのにフェアウェイキープ率が51.44パーセントと悪いことに問題がある。これは全体の196位と底辺に近い。この数字が平均スコア190位(72.156)に直結し、予選通過さえままならない状況に陥っているのだ。
もちろん日本に帰ってくれば年間2、3勝できるくらいの力はあるだろう。「自分が主役になれる舞台」でこそ輝きを放つ石川のこと。注目を集めギャラリーに騒がれる立場になれば自信も戻ってくるはずだ。
観る人がほとんどいない裏街道でプレーするしかないアメリカに固執するより、実力を発揮しやすい日本に戻ってくるのも一案かもしれない。