ちょっとした見栄が、ゲームをだいなしにする。
「ちょっとした見栄が、ゲームをだいなしにする」byアーノルド・パーマー
説明はまったく不要なほどの「言葉」であろう。しかし、あのパーマーがこの言葉を遺しているところに意義がある。パーマーはいうまでもなく、現代の米国プロゴルフを今日の隆盛に導いた第一人者である。偉大なプレーヤーは何人もいるが、人気という点ではまちがいなく史上第一位だった。
ストロークプレーにおいてのゴルフはいかにミスを少なくするか、といういわば保守的な要素を色濃くもつスポーツである。
ところがパーマーは「攻撃=チャージ」という概念をもちこみ、ゴルフをエキサイティングにして、“アーニーズ・アーミー”という熱狂的なファンを生み、米国のヒーローになった。どんな難しい位置からもピンを狙い、それが成功すると拍手喝采、我らがアーニーはやってくれたぞ! ってなものだ。
しかし、ゴルフの本質の半分は先ほどもふれたが、守ること。その後に現れたジャック・二クラスが攻守を兼ね備えた典型で、帝王と呼ばれた。ともかく、ゴルフはミスを少なくするゲームだから、安全優先がスコアメークには欠かせない一大要素であることは紛れもない事実。
その点でいえば、見栄は最大の敵なのである。アベレージゴルファーにおいてもこれは同じ。腕前も省みずショートホールなどでも同伴競技者より長いクラブは持ちたがらないし、レイアップせずにクリークの餌食となったりするのは日常茶飯事。
きっとあなたにも経験があることだろうし、パーマーもまた、守るべきところを、ギャラリーの熱い願望にも似た声援に押されて、チャージし、敗れたことは何度もあったに違いない。そのためか、グランドスラマーには至っていない。しかし、記録より、記憶には誰より残っているプレーヤー。
ゴルフの本質と、プロスポーツの人気という狭間に立つパーマーから出た「言葉」だからこそ、味わい深いのである。