“禁断の飛び”は本当か? キャロウェイ「エピックスター」
まずは注目の「EPIC スター」(キャロウェイ)から。ご存知、2017年ドライバー最大のヒットモデルと言える「GBB EPIC」の、“アイアンバージョン”だ。
ストロングロフトのアイアンは、球を上げやすくするためにソール幅を広くしたりポケットキャビティを深くしたりして、ヘッドの後方がポコッと膨らんでいるヘッドが多いが、このモデルは、ヘッドの後ろ側がシンプルで構えたとき気にならなのが特徴。言ってみれば、普通のアイアンをサイズアップした、という印象だ。
さて、打ってみてどうか。
「グースが利いていて見るからに球がつかまるし、ブレードが厚いのでラフからでも強い球が打てそうです。打感はどうしても硬くなりますが、初速が出ているし、7Iでキャリー200ヤードを超える飛びには替えられません。4モデルの中で、トータル飛距離が最も出ました」(中村)
キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
204Y 217Y 15.7度 58.2m/s 4056rpm
と、ドライバーの評判そのままにアイアンでもぶっ飛び性能を発揮した。それにしても、試打クラブは7番アイアンである。いくらドライバーのヘッドスピードが47m/秒のプロゴルファーが試打者だとしても、とんでもない飛距離だ。ちなみに普段のテスター・中村の7番アイアンの飛距離は162ヤード。「5番手飛んでいる」という状態だ。
顔が良くなった“元祖飛びアイアン” プロギア「egg PF」
いきなり7番で200ヤード超えを叩き出した本企画。続いて登場するのはプロギア「egg PF」だ。「egg」アイアンといえば、ユーティリティのような特異な形状ながら、その圧倒的飛距離性能で飛びアイアンの市場を開拓したパイオニア。
初代の発売当初は「異形アイアン」といった呼ばれ方もしたものだが、この新作は“パワーフォージド”(PF)というだけあって、ストロングロフトアイアンにしてはヘッドがスリムで構えやすくなっている。グースはほとんどついていないので、よりシンプルな顔つきになっている。
「ボディに軟鉄を用いることでヘッドをシャープにしてカッコよさを出しながら、弾きが強くて球が上がって飛ぶ、打点がバラついても球が散らばらない、という機能性が十分に備わっている。たとえばアスリートが、長い番手をこのモデルにするというコンボセットも大アリです。“飛び系アイアンの進化版”という印象ですね」(中村)
キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
204Y 214Y 15.4度 58.1m/s 4045rpm
というわけでEPICに続いてこのegg PFも安定の飛距離210ヤード超えである。アマチュアゴルファーの平均ドライバー飛距離より少し飛んでないくらいの数字だが、打っているのは7番アイアン。飛び系アイアン恐るべし、である。
幅広ソールでミスヒットに強い! ブリヂストン「ツアーB JGR HF1」
続いては、ブリヂストンの「ツアーB JGR HF1」。このアイアンの特徴はなんと言ってもソール幅の広さ。ほとんどユーティリティのような、振り切った形状をしている。
ストロングロフトアイアンのジレンマは、ロフトを立てた分ボールが上がりにくくなることにあるが、このクラブは分厚いソールによって、その問題を解消している。決して“美しい見た目”とは言えないが、その分機能性は高い。
「今回の4モデルの中で、ソール幅が最も広いのがこのアイアンです。だから重心が低くて球が上がりやすいし、ダフり気味に入ってもソールが滑ってくれる。地べたからのショットでダフリ・トップのミスを軽減してくれるモデルであり、秋から冬にかけての薄芝でも心強い味方になりそうですね。また、ソール幅が広いことによって、上から打ち込むのではなく払うイメージでやさしく打てる効果もあるんですよ」
キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
202Y 215Y 15.7度 57.9m/s 4092rpm
こちらも飛距離はもう当然のように210ヤード超えである。プロが打っているので数字には表れにくいが、ソール幅が分厚い分ミスヒットへの強さは4モデル中NO.1。ユーティリティはロングアイアンよりソール幅が広くてボールが上がりやすいからやさしい。それと同じような感覚を、ミドルアイアンでも味わわせてくれる。
ブームの立役者。おなじみヤマハの「インプレス UD+2」も改めて打ってみた
現在の“超ストロング”なぶっ飛びアイアンブームに火をつけたモデルといえばヤマハの「インプレス UD+2」。7番アイアンのロフトが26度という衝撃的なスペックがもたらす圧倒的飛距離性能……のみならず、その打ちやすさ、ボールの上がりやすさが評価され、大ヒットとなったモデルだ。発売から3年が経ったが、改めてその性能をたしかめてみた。
「アイアン型ユーティリティに近い顔つきですね。幅広ソールでシャローフェース、短いネックで重心の低さを感じます。そして、ややグースネック。アイアンでもダウンブローに打ち込むイメージはなくて、払うように軽く振り抜けば、クラブがボールを上げてくれるしつかまえてくれます。飛ぶことは言うまでもないでしょう」(中村)
テスター・中村いわく、「8番が6番と同じくらい飛ぶクラブですが、同時に6番でも8番のやさしさで打てるクラブでもある」とのこと。実際、今回テストした4モデルを比較して、もっともボールが高く上がったのがこのUD+2。さすがは名器といえそうだ。
キャリー 飛距離 打ち出し角 ボール初速 スピン量
205Y 216Y 17.3度 58.5m/s 4144rpm
「ものすごく飛ぶ!」のに“飛びすぎない”。そこにアイアンの進化がある
4モデルの7番アイアンを打ち終えた感想を、中村に聞いた。
「どのクラブもキャリーで200ヤードオーバー。ハッキリ言ってこれは驚異的です。これまで160~170ヤードを5Iや6Iで打っていたアマチュアが、同じ距離を7I、8Iで打てればゴルフがグッと楽になります。HSが速くない人にとってはもちろん、アスリートゴルファーでも、長い番手を飛び系アイアンに替えるのはアリです。今の“飛び系”はただ飛ぶだけじゃなくて、やさしさも兼ね備えていますから」
今回の4モデルは、飛び系アイアンとしてはヘッドがスリムな「エピック スター」「egg PF」の“スッキリ顔チーム”と、ソール幅がワイドな「UD+2」「JGR HF1」の“幅広ソールチーム”とに分けることができる。
中村いわく、スッキリ顔チームはラフからでも抜けやすくて、幅広ソールチームはダフリに強いのが特徴。正直に言って飛距離の数字には大差が出なかった(どれもめちゃくちゃ飛んだ)が、性能の違いは確実にあるので、ここはプレースタイルや顔の好みで選ぶのが吉。
「こういう飛び系アイアンは、シャローなフェース形状や広めのソール幅によって、ダウンブローに打ち込むのではなく、テークバックを“低く長く”して払い打つイメージが出せるし、そう打つほうがクラブの性能を生かせます。ヘッドの重心が低くなっているので、シャローに打っても芯を喰いやすいし、フェースの“下っ面”に当たってもそこそこ飛ばせる。そう考えると、ウッド系クラブと打ち方を大きく変える必要がないという意味でも“やさしい”と言えます」(中村)
たしかに、幅広ソールチーム、とくにJGRの構えた印象はユーティリティ的。打ち方も、見た目的にも、アイアンからユーティリティまで、セッティングの流れが良くなりそうだ。一方で、アイアンにはあくまでアイアンの見た目をしていてほしい、というゴルファーにとっては、“見た目普通”でぶっ飛ぶスッキリ顔チームのアイアンは魅力的だろう。
「最後にもう一つ。かつての飛び系アイアンは、フェアウェイからでもフライヤーみたいに球がすっ飛んでしまう傾向がありましたが、今どきの飛び系アイアンはスピンが程よく入るようになっている。そういったところにも確かな進化を感じますね」(中村)
「飛びすぎる」「ドロップする」「球が上がらない」「打感が硬すぎる」、かつての飛び系アイアンには様々な問題点があった。それらを解決し、性能が磨き上げられてきた現代のぶっ飛びアイアン。「アイアンには飛びは求めない」という硬派なゴルファーも、そろそろ一度試すべき時が来ている……かも。