初優勝を果たした試合で、現役生活に別れを告げる
「現状で自分のゴルフが家族を超えることはないと心から感じており、今年最後のメジャーであるエビアンで終える事を決めました」と綴った藍。「非常に難しい決断」を下した裏には、全英女子オープンの会場で倒れ救急車で現地の病院に搬送された父の存在がある。
4歳のときからゴルフのすべてを教わった父・優さん。「お父さんのいうことを聞いて間違ったことはないんです。ゴルフに関しては宗教みたいに(父のことを)信じています」と10代の頃の藍はいったものだ。
プロ転向後は技術優先の父と、フィーリングを優先させたいという娘の間で幾度となく衝突があった。しかし遅れてきた反抗期にも優さんは大きな愛情で藍を包み、コーチとして、そして父として最善を尽くしてきた。
そんなかけがえのない父が会場で倒れ意識を失った姿を目の当たりにしたのだから、動揺しないはずがない。幸い優さんの意識はすぐに戻り快方に向かったが、現在も闘病中。
詳しい病状は公表されていないが、藍や2人の兄たち(聖志・優作)のスウィングチェックで国内外を飛び回るだけでなく、沖縄・名護の大北練習場でアマチュアやジュニアを夜中まで指導する多忙な日々に体が悲鳴をあげたことは容易に想像できる。
固い絆で結ばれた父と娘。ゴルフでなにかを成し遂げようと全身全霊で夢を追いかけてきた藍と、身を削って彼女をサポートしてきた優さん。2人の絆は病という不幸なアクシデントよって一層深まり「今こそ寄り添いたい。寄り添うべき」という決断に至ったことがブログの文面から推測できる。
残された時間は短い。9月1日に開幕するキャンビア・ポートランド・クラシックと14日開幕のエビアン選手権でのプレーが藍の勇姿の見納めとなる。
海外本格参戦4年目(09年)にして涙の初優勝を飾り、その2年後には米ツアーで初めて両親の目の前で勝った思い出深い大会。藍のラストランにこれほど相応しい舞台はない。
日本のファンにもっと戦う姿を見せたかったという心残りはあるに違いない。だが家族を思って下した勇断に拍手を贈りつつ、宮里藍、最後の戦いを見届けたい。