58歳のマイズは「もっと上手くなるための練習」を繰り返していた
「JAL選手権」練習日、開催コースの成田GCの練習場ではコーリー・ペイビン、ラリー・ネルソンといったメジャー王者に、イェスパー・パーネビック、フレッド・ファンクといった名手たちがボールを黙々と打っていた。そんなな中、取材に訪れたプロゴルファー・中村修が足を止めたのが、ラリー・マイズの打席だ。
ラリー・マイズといえば、1987年のマスターズ。セベ・バレステロス、そしてグレッグ・ノーマンとの三つ巴のプレーオフを、劇的としか言いようのないチップインバーディで制した名手だ。日本でも1988年から3年連続で勝利を挙げているので、オールドファンにはお馴染みだろう。
そんなマイズが行っていたのは、実際に打つボール約30センチ後方にもう一つボールを置き、5番アイアンで打つドリル。ボールをすくうような打ち方をすると後ろのボールに当たってしまうので、必然的にダウンブローで打たなくてはならない練習法だ。
中村が驚嘆したのは、まずはマイズの練習の“精度”だ。
「通常、ボールをもう一つ後ろに置いて打つドリルはショートアイアンでやることが多いんです。5番アイアンともなるとダウンブローの入射角を確保するのが難しいですから。それをあえて5番で行うことで、より精度の高い練習となっています。その結果、毎回同じ入射角、同じスウィングプレーンでボールをとらえていました。まさに名手の練習。いいものを見ました」
アマチュアゴルファーも参考にしよう!
さらに、ボールの後方には斜めに黄色のスティックが立てられている。後方からの写真を確認してみると、スウィングプレーンに沿って、斜めに立てられているのが見て取れる。
練習場に居合わせたレジェンドたちの中で、このようなドリルを行っていたのはマイズただ一人。その他の選手は、基本的にはボールを打つ“だけ”の練習をしていた。
「ボールの後ろにボールを置いて入射角を確認し、さらに黄色のスティックを斜めに刺してスウィングプレーンのチェックも行う。アメリカから遠く離れた日本の地での試合でも、観光気分ではなく、勝ちたい、上手くなりたいという気持ちがこの練習からは滲みます。58歳、まだまだ現役バリバリですね。アマチュアゴルファーのみなさんも……というより、僕自身が見習わなければならない姿です」(中村)
スティックを立てて打つのは我々アマチュアゴルファーにはハードルが高いが、中村によればボールの後ろにもうひとつボール置いて練習するのは「アマチュアゴルファーも是非真似してもらいたい」という。
「使用するクラブはマイズのように5番アイアンではなくPWを選び、ボールは30センチくらい離してセットしてください。いきなりフルスウィングから始めずに、肩から肩くらいの大きさのスウィングから始めることをオススメします。この練習を繰り返すことで、ボールに当たってから先のターフを取るダウンブローのインパクトが身につきます」
58歳のマイズを見習って、還暦を過ぎても上手くなるゴルファーを目指したいものである。
(2017年9月6日13時30分、内容を修正しました)