宮里藍がアメリカで愛されたワケとは...?
藍が高校生の頃から憧れた元世界女王アニカ・ソレンスタムは米女子ツアーの公式サイトが報じた「藍引退」のニュースをいち早くツイッターでリツイートした。
同ツアーのコミッショナー、マイケル・ワン氏は「アイがLPGAに来てくれて本当に良かった。特別な才能と人間性に溢れた人」とエビアン選手権の地フランスでツイッターに心情を吐露した。
アメリカ勢ナンバー1のレクシー・トンプソンは藍のことを「ツアーでもっとも好かれた人」という。なぜそこまで藍は世界中の人々を虜にしたのだろうか?
ひとつの例がある。
今年7月の全米女子オープンのこと。藍のもとに予期せぬ訪問者があった。ミーガン・フランセラ。藍と同時期にツアーデビューし2007年のマスターカードクラシックで1勝を挙げている元LPGAツアープレーヤーだ。
藍が世界ランク1位に輝いた2010年頃までは上位争いをしていたが、その後シードを逃し現在は競技生活から離れアメリカ最大のアマチュアゴルフ協会EWGA(エグゼキュティブ・ウーマンズ・ゴルフ・アソシエーション)でキャリアを積んでいる。
そのフランセラがわざわざ全米女子オープンの会場まで足を伸ばしたのは「大切な友人にサヨナラをいうため」だった。
「私がドライバーの不調に悩んでいたときアイから3ページに渡る手紙を貰ったんです。アイも以前ドライバーで悩んだことがあって、本人の体験と、それをどうやって克服したかが書いてありました。他人のことでこんなに親身になってくれる人なんてアイ以外いません!」
だからフランセラはどうしても藍が競技を離れる前に元同僚を労いハグしてお別れをいいたかったというのだ。
エビアン選手権は荒天の影響で3日間に短縮された。予選ラウンドを同組で回る元世界ナンバー1、ヤニ・ツェンは「行かないでアイ」と泣き笑いの表情を浮かべる。惜しまれつつ表舞台を去る藍はこれ以上ない競技人生を全うしたといえるだろう。
写真/姉崎正、大澤進二