東南アジア勢の台頭
賞金や移動といった環境の問題で、日本からアジアンツアーに参戦する選手は多くはないですが、逆にアジアンツアーから日本ツアーに「移籍」する選手は今後も増えそうです。男子ツアーの不人気が叫ばれて久しい中、どういった形でも変化が起きるのは歓迎すべき事だと思います。
ツアーのレベルの底上げにもなりますし、日本ツアーがアジア各国で取り上げられるきっかけにもなれば、テレビの放映権やスポンサー獲得など、商業的な面でもプラスに働くと思われます。
男子ツアーの賞金王レースは終盤に向け盛り上がりを見せますが、現在賞金ランクトップ30の中で日本勢は11人、海外勢が19人という比率です。海外勢の中では韓国勢がもっとも多い7人となっていますが、近年では東南アジアの選手たちも日本ツアーへ参戦が増えてきています。
2017年9月19日火曜日に会場を訪れると、タイの選手たちがグループを作り練習をしていました。タイといえば日本ツアーではプラヤド・マークセンが長く活躍していますが、近年は20代の若手選手も多く参戦しています。アジアンツアーの賞金ランクでもトップ20のうち6人がタイの選手で、東南アジアの中でもっとも勢いのある国といってもよいでしょう。
その証拠に彼らのウェアにはシンハービールやタイ航空、中にはリコーなどのスポンサーロゴが入っており、注目度の高さがうかがえます。
「タイは常に暖かく、よいコースも多いのでとても環境に恵まれています」
こう語ったのは24歳のパヌポール・ピッタヤラット。アジアンツアーでは賞金ランク14位につける若手の実力者です。
「環境という点では、ジュニアの頃から育成制度がしっかりとあり、試合も多く組まれていることも大きいと思います」(ピッタヤラット)
このあたりの取り組みは、日米のツアーを席巻している韓国勢と似ているかもしれません。ピッタヤラットは8歳からゴルフをはじめ、最初は父親や地元のコーチから手ほどきを受けていたそうです。その後、オーストラリア留学などでゴルフ技術と英語を学び、現在はコーチをつけていないこともあり、自らスウィング理論を学びながら弾道計測器を用いて自らの技術を磨いています。
「最近はバイオメカニクス(生体力学)を勉強しています。体の仕組みや力の効率的な使い方を知ることでスウィングのすべてを理解できます。加えて新しいテクノロジーを用いることで、スウィングを正しい方向に導いてくれます」
童顔のためか、どこかあどけなさの残る表情ながら、流ちょうな英語で「学ぶことが成長につながると」答えてくれた姿を見て、異国の地を転戦しながらも結果を残し続ける理由が分かった気がしました。
5年後が楽しみなインド勢
タイには及ばないものの、今後の更なる躍進が期待できるのがインドです。アジアンツアーを主戦場に戦う29歳のインド人プロ、ガガンジート・ブラーにも話を聞きました。
「インドはまだそれほどゴルフが盛んではありません。これから5年、10年と時間はかかるかもしれませんが、必ずもっと強い選手が生まれてくると思っています。ナショナルチームに欧米のコーチを招聘するなど、制度面も整ってきています」
自身も10時間ぶっ続けで練習をするなどかなりの努力家です、そういった勤勉でハングリーな側面と、今後整備されてくるであろう環境面が上手く融合すれば、アジアンツアーを引っ張っていくような選手が生まれてくると思います。
コースが選手を鍛えるアジアンツアー
「このディボット見てみろよ。とんでもなく深いだろ」
ドライビングレンジに残されたアジアンツアー選手のターフ跡を指さしながら、こう指摘したのはゴルフダイジェストの中村修プロ。自身もアジアンツアーのQTに挑戦した経験から、多様な芝やライに対応するためにダウンブローのアイアンショットが必須だといいます。
「グリーン周りはバミューダ芝が多いけど、違う種類の芝も生えていたり、目も複雑。それに比べたら日本のゴルフ場は優しく感じるんじゃないかな」
アジアンツアーをはじめ世界中のツアーでのプレー経験を持ち、現在はクラブメーカーのプロ担当であるウィル・ヤナギサワ氏はアジアンツアー選手の技術力は厳しいコース環境によって磨かれていると語りました。
先に述べたパヌポール・ピッタヤラットはアジアンツアーで戦うためにはアプローチ技術のバリエーションの多彩さが重要だと話し、同じライから様々なアプローチショットを練習していました。
アジアンツアーの選手がグリーンの起伏が多く、難易度の高いカレドニアンゴルフクラブをどのように攻略するのかに注目したいと思います。