試合会場で40キロのバーベルを担いでスクワット
優勝した日本女子オープンで、畑岡は「今日はいい流れがきている」と優勝を意識したという11番以降も、果敢にピンを狙っていきました。
そのスタンスは傾斜でも、ラフからのショットでも変わりませんでした。さまざまライから距離と方向性をコントロールできる要因は、前傾確度のキープにあります。
「姿勢を維持するためのトレーニングは常にしています」
こう語るのは畑岡がナショナルチーム時代からトレーナーをつとめる栖原(すはら)弘和さんです。
「どんな姿勢でもそうですが、一定の形を維持するには足裏の感覚が重要です。試合会場には40kgのバーベルを持ち込み、それを持ったまま太ももが地面と水平になるくらいのスクワットをさせています。下半身の筋力をつけることも目的ではありますが、重いものを持ちながらバランスを崩さずにかがむためには、足の裏にまんべんなく力をかけ体幹を緩ませないように動く必要があります」(栖原)
最終日のようにグリーン端にカップが切られていたとしてもピンデッドに攻めていけるショット力は、下半身のバランスを維持するトレーニングに裏打ちをされたものなのです。
100メートルを13秒5で走る下半身のバネが、スウィングを支えている
畑岡の下半身に関して、バランス以外にも優れた感覚を持っているというのは、日本ゴルフ協会競技者育成強化副部長を務める筑波大学の白木仁教授です。白木教授は専門のスポーツ医学を基に選手のパフォーマンス向上などを研究しており、陸上選手だった中学時代から畑岡の身体を知る一人です。
「畑岡さんに初めて会ったのは彼女が中学生の頃です。当時は陸上選手として大学に来ていたので走り方の指導をしていました。その後、高校生になり(ゴルフの)ナショナルチームに入った彼女のスウィングには当時からジャンプするような動きがありました」(白木)
ダウンスウィングで地面を押して、跳ね返った力を回転に変える地面反力を使った打ち方は、今でも畑岡のスウィングの中で大きな特徴となっています。この地面を押す動きこそが飛距離を生み出しているのです。
「陸上出身の選手は地面を押す感覚を知っていて、そこから返ってくる反力の使い方も上手な選手が多い。畑岡さんもその典型です」(白木)
中学時代からバネのある走法で100メートル・13秒5の記録を出していたそうですが、その下半身のバネが競技を移った今も活きているのです。
米ツアーでの経験がタフなコンディションでの強さをもたらした
こういったフィジカルを活かして連覇を成し遂げた畑岡ですが、プロ転向後すぐに挑戦した米ツアーから得られたものも大きいようです。
「アメリカには本当にいろんなコースがあるんです。とにかくバーディをたくさんとらなくてはならないコース、我慢してパーを拾っていくコース。しかも芝質もコースによって毎週変わってきます」(畑岡)
米ツアーのように変化が大きい環境に身を置くことで「アンジュレーションのきついグリーンで行われた4日間競技」といった、難易度の高い今大会でもベストなパフォーマンスが出せたのではないでしょうか。
3日目を単独トップでホールアウトした後のコメントでは「20アンダーを目指したい」と、同大会のアンダーパー記録を8打超える目標を口にして、それを見事に達成しました。畑岡は昨年プロ転向した際に「5年以内の海外メジャー優勝」を掲げていますが、今回の優勝でまたひとつ目標に近づけた事は間違いないでしょう。