2017年10月2日、ついに発表された10代目の「ゼクシオ」。その性能はいかなるものなのか、発表会の翌日に開催されたメディア向け試打会に潜入して、試打してきた!

過去のゼクシオを“正統進化”させてきた

2017年の年末から2018年にかけての最注目クラブといっていい10代目ゼクシオ「ゼクシオ テン」。初代の発売から18年、常に破格の売り上げをキープし続けたきたモンスターシリーズだけに、その動向を、ゴルフ界全体が注視していると言っても過言ではない。

ともあれ、ゴルファーにとって重要なのは、“打ってどうなのか”という点。というわけで、10代目ゼクシオを一通り試打したプロゴルファー・中村修に感想を聞いてみよう。

「10代目とあって、今までのゼクシオの進化の集大成という印象があります。ガラッと見た目を変えたり、斬新な機能を盛り込んだりといったチェンジはせず、過去のクラブを真っすぐ進化させてきた印象。基本的には、従来のゼクシオユーザーが、安心して買い換えられる、そんなクラブだと思います」

画像: スウィートエリアの拡大のおかげで、多少ミスヒットしても芯で打っているかのような飛距離と方向性を味わえる

スウィートエリアの拡大のおかげで、多少ミスヒットしても芯で打っているかのような飛距離と方向性を味わえる

その特徴を見ていこう。今回のゼクシオは、シャフトによって芯に当てやすく、その芯自体が前作より広がっていることで、誰もが“芯食い体験”できる、というのが謳い文句。果たして、実際のところどうなのか。

「芯の広さは間違いがありません。極端な話、どこに当たっても大体真っすぐ飛ぶ。左右の打点のズレに強いクラブは多くありますが、ゼクシオ テンの場合は上下の打点のズレにも非常に強い。ゴルフはミスのゲームですから、ミスショットした場合にミスの幅を小さくしてくれるのは、とくにアベレージゴルファーにとっては大きなメリットだと言えます」(中村、以下同)

ゼクシオといえば「MP」の名を冠した純正シャフトの評価がシリーズを通じて高いが、今回の「MP1000」シャフトも期待を裏切らない。

「一箇所がすごくしなるのではなく、真ん中から先にかけてダウンスウィングでしっかりとしなり、それがインパクト前に素早くしなり戻る。私が打った印象としては“振り遅れないシャフト”ですね」

画像: 純正シャフトの「MP1000」はしなりとしなり戻りのバランスが高く、ヘッドが上手く加速して振り遅れを防いでくれる

純正シャフトの「MP1000」はしなりとしなり戻りのバランスが高く、ヘッドが上手く加速して振り遅れを防いでくれる

また、これはドライバーに限ったことではないが、ゼクシオ テンは総じて球が強い。冒頭で述べたように極端な味付けがされているというわけではないが、ボールを上に上げるか、前に行かせるかの“二択”があったならば、後者の味付けのほうがやや強い印象だ。

「たとえば5番ウッドは前モデルよりもフェースが厚くなっているそうです。フェースが厚いとフェース上目に当たりやすくなり、結果的にはスピンが少なめの強い弾道になりやすいのですが、その分見た目には難しく感じやすい。そうならないように、クラウン後方をストレッチしたようなシャローバック(後ろが薄い)形状になっていて投影面積はむしろ大きいことで、見た目の安心感も保たれている。このような小さな工夫が、実にゼクシオらしいですね」

画像: 高くなったフェース厚を感じさせない投影面積の大きい5W

高くなったフェース厚を感じさせない投影面積の大きい5W

ちなみにユーティリティは今回の10代目からグローバル展開を意識して呼称を“ハイブリッド”に変更。そのハイブリッドも、長い番手はシャロー、反対に短い番手はフェースに厚みがあり、アイアン的な形状になっている。ネックの塗装がされていないこともあり、よりアイアン的に構えられるクラブとなっている。たとえば7番アイアンまで入れて、次にハイブリッドの6番を入れる、といったセッティングを採用する場合に、それがやりやすくなっているわけだ。

「もうひとつ注目したいのがクラウンのカラーリングです。ハイブリッドを見てみると、ややトウ寄りでややヘッド後方よりの位置がもっとも明るく、そこから周辺にかけて徐々に濃い色になっています。この塗装の効果で、見た目的にフェースを開かずに使いたくなるんです。ゼクシオ テンはフェースをあまり開閉しないほうがいい結果の出せるクラブだと思いますが、塗装がフェースの開閉を抑えてくれているわけです。この辺りも、10代続いたクラブならではの工夫と言えそうです」

画像: ハイブリッドのネックに塗装がされていないことで、アイアンとの“つながり”が絶妙。ウッド類はクラウンのグラデーションにも注目だ

ハイブリッドのネックに塗装がされていないことで、アイアンとの“つながり”が絶妙。ウッド類はクラウンのグラデーションにも注目だ

ハイブリッドは、以前はフェアウェイウッドの延長線上で設計がされていたというが、近作になってアイアンの延長線上での設計となったという。実際、ロフトがしっかり見えて安心感がありながら、打つとしっかり前に飛び、ラインが出せるクラブとなっているのが印象的だ。

ハイブリッドがアイアンの延長線上で設計されていると同時に、アイアンはそのハイブリッドの設計の影響を受けている。非常に広いソールが、その表れだ。

「実際、ソールはユーティリティのように非常によく滑ってくれます。そのため、入射角をシビアにコントロールする必要がなく、今回はマットの上から試打でしたが、ウェットなコンディションやフェアウェイバンカーなど“刺さってはいけない”ライで真価を発揮すると思います。構えた位置に戻ってきやすいMP1000シャフトとの相性は抜群ですね」

ゼクシオ テンのアイアンはチタンフェースを採用しているが、これは弾きの良さを追求したというよりは、比重の軽いチタンを使うことで周辺に重量を配分するためという狙いが強いという。周辺に重量を配分すると慣性モーメントがアップし、慣性モーメントがアップすると上下左右の打点のズレに強くなる。要するに、ミスがミスになりにくくなる。

画像: ソールの幅が広くトップブレードが厚い。周辺に重量を配分することで重心を深くし、芯も広がった

ソールの幅が広くトップブレードが厚い。周辺に重量を配分することで重心を深くし、芯も広がった

広いソールの効果で入射角のズレに対応し、高い慣性モーメントで打点のズレもフォローする。アマチュアはミスをする。それを知り尽くしているからこそできる、絶妙な設計がされている。

「2000年に初代のゼクシオが発売されてからの18年間で、クラブは劇的に進化しています。正直、芯を食った場合の飛距離はどのクラブでもそう大差はありません。問題は、芯を外したとき。もっと言えば、ミスをしたときにどんな球が出るのか。そこにクラブの真価が問われる時代になっています。繰り返しになりますが、ゴルフはミスのゲーム。ナイスショットしたときにいい球が打てるのはもちろん、シャフト、ソール、フェース……様々な工夫でミスがミスにならない。それがゼクシオ テンの最大の長所ではないでしょうか」

10代目を迎えたゼクシオ。最新作も、ゼクシオユーザーの期待を裏切らない、完成度の高いクラブであると、ひとまずいえそうだ。

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