横峯の代名詞、オーバースウィングはあえて矯正しない
米女子ツアーに参戦後、結果の出ない期間が続いている横峯ですが、2カ月ほど前にスウィングコーチであるコーリー・ランドバーグと契約をしました。ランドバーグはジョーダン・スピースのコーチでもあるキャメロン・マコーミックと活動を共にするアメリカ人コーチ。スウィングやプレースタイルなどかなり感覚派のイメージが強い横峯が、コーチをつけた意図とはどんなものだったのでしょうか。
「プロがコーチをつける」というと、スウィング改造や球筋を変えるというイメージが強いと思います。たしかに一昔前までは、特定のスウィング理論をもとに選手の動きを当てはめていくという技術的な「ティーチング」が主流でした。
しかし現在では、選手の動きに合わせて最善のパフォーマンスを出させる「コーチング」が主流になっています。キャメロン・マコーミックもスピースに対してはそのようなコーチングを行っています。
スピースはフォローで左ひじが引けたような動きが特徴的。通常であればジュニア時代に矯正されかねない動きですが、マコーミックは「彼の中ではクラブコントロールのカギを握っている動きだ」と判断し、変えることはありませんでした。
そして横峯のコーチになったランドバーグも、彼女の最大の特徴であるオーバースウィングを修正する事はしていないようです。
感覚派の選手に合ったコーチング
横峯のような感覚派の選手に、身体の動きを理論立てて説明してそれを取り入れるような取り組みを行うと、選手は混乱をしてパフォーマンスが落ちてしまう事があります。
「トップの形は変えないようにしています」と本人も言っていましたが、これは正しい選択だと思います。アマチュアへのレッスンではオーバースウィングは良くない動きとされます。しかし毎回同じようにダウンスウィングでクラブを下ろしてくることができれば、トップの形や大きさはそれほど問題ではありません。
フレッド・カプルスやバッバ・ワトソンのようにオーバースウィングでも結果を残しメジャーチャンピオンになった選手もいます。
現在、横峯が意識しているのはダウンスウィングでの腰を開くタイミングです。
「腰の開きが早いとタイミングが合わずに振り遅れてしまいます。腰が先に行くっていうか、そういった動きが出ないような取り組みをしています」(横峯)
日本女子オープンの練習日、ベルトループに棒をはさんで素振りを繰り返しながら腰を開くタイミングをチェックしていました。
良い部分に目を向ける
腰が開くタイミングのズレを修正することができれば、オーバースウィングもかつてのように大きな武器になる事は間違いありません。欧米の選手に比べ体格で劣る横峯は、クラブの運動量を大きくする必要がありますが、そのためにはトレードマークである大きなトップは欠かせない動きです。
ダウンスウィング以外の部分では「体重移動などもとくに意識していません」と言うように、細かいスウィングメカニックについてはあまり意識している感じではありませんでした。コーチのランドバーグはスウィングのメカニック部分に意識が行き過ぎ、感覚が失われないように気を付けているのでしょう。横峯の武器になる良い部分を伸ばすコーチングが続けば、復調する時期がやってくるでしょう。
今後は来季の米女子ツアーの出場権をかけ、11月末に行われる最終予選会に参戦予定の横峯。過去の栄光とスウィングを捨て、進化を求める彼女の活躍に期待がかかります。
写真/岡沢裕行