テンフィンガーグリップの「桜美式」
時松隆光プロの特徴は、なんといっても野球のバットと同じような握り方をするテンフィンガーグリップです。これは時松プロの師匠にあたる篠塚武久さんが提唱する“桜美流(おうみりゅう)”ゴルフの特徴。グリップのみならず、手の位置が高いハンドアップの構えや、パッティングのやり方にも大きな特徴があるのですが、ここではグリップに注目してみたいと思います。
時松プロは、左手の親指をシャフトの上に乗せず、右手の小指も左人差し指に絡めません。握力の弱いジュニアゴルファーにオススメの握り方ですが、プロゴルファーが採用するメリットもあります。
ひとつは右手の感覚を生かしやすいこと、もう一つは左手の親指をシャフトの上に乗せていないので、手首の動きを使いやすくなりフェースを返しやすくなること。左手親指付け根のケガの予防にもなります。
500年以上前から続くとされるゴルフの歴史の中で、現在のオーバーラッピンググリップを見出したのは約100年前の名手、ハリー・バードンと言われており、左に曲がるフックボールのミスショットを防ぐために編み出したと言われています。
ゴルフのスウィングでは、インパクトでフェースを一気に返す必要はありませんが、フォローサイドでフェースが自然に返るように振ることが、つかまったボールを打つために必要な動作になります。それには、このテンフィンガーグリップがやりやすいのです。
フェース向きのコントロールが抜群
下の写真を見ると、フォロー(写真右)でフェースが返り過ぎていません。テンフィンガーグリップによって手首が使いやすくなっていることで、かえって手が返り過ぎることも防いでいるように見えます。100年前のクラブではヘッドが返り過ぎるという理由で使われなくなったテンフィンガーグリップですが、現在の長く大きくなったクラブにはむしろマッチしているのかもしれません。
フェースのローテーションが少なく球がつかまらない人は、練習場でテンフィンガーグリップを試してみるとスムーズな手首の使い方が体感できるはず。168センチ、75キロという体格で2017年のツアーで大暴れしている時松プロを見習う価値は、十分にあると思います。
写真/有原裕晶、姉崎正
時松プロを育てた篠塚武久氏の理論を分かりやすく解説した「みんなの桜美式」は週刊ゴルフダイジェストで連載中。こちらもぜひ、チェック!