右手首の角度をキープする。これがアプローチの「基本中の基本」
「マスターズGCレディース」の3日目、10アンダーでトップに並んでいた上田桃子プロは、18番ホールのセカンドショットをグリーン右に外したものの、左足上がりのライから打った3打目を見事チップインバーディとし、結果的には2位に2打差をつけての優勝となりました。
テレビでご覧になった方も多いかと思いますが、このウイニングショットの打ち方が実に素晴らしかった!
なにが素晴らしかったのか。それは、極めて基本に忠実であるという点です。3打目はわずかな左足上がり。つまり、若干の上り傾斜であるため、傾斜に逆らって打つとクラブが刺さって球が強く出やすく、傾斜なりに打つとアオり気味になって浮いてしまうという、微妙な状況でした。
そんな中、上田プロは「傾斜に逆らう」と「傾斜なり」のちょうど中間のような、絶妙な入射角のスウィングを披露します。それを実現した秘訣が、右手首の角度にあります。上田プロのアプローチは、構えた状態と打ち終えた状態で、右手首の作る角度がまったく変化しません。
これは、イコール手を動かしていないということで、このように打つためには腹筋を使ってストロークをする必要があります。手は構えた状態のままにしておいて、腹筋あるいは体幹を動かすことでクラブを動かす。これこそが、アプローチの基本中の基本。その基本ができているからこそ、微妙な入射角のコントロールが可能になったのだと思います。
上田プロによれば、実はこのアプローチ「ファーストバウンドがグリーンとカラーの境目に落ちて、思ったよりもスピンがほどけてしまった」のだと言います。しかし、右手首の角度をキープし続けたことでフェースの角度もブレることはなく、思ったよりも勢いよく転がったものの狙ったライン上からは外れていなかったことから、カップに吸い込まれることになったのです。
アドレスからインパクトまで、右手首の角度を変えずに振る。「そんなのカンタンでしょ」と思うかもしれませんが、やってみるとこれがなかなか難しい。そんな基本を極めた“凄み”を、上田プロは見せてくれました。
写真/岡沢裕行