ドライバーをコントロールできていない
石川は今週アメリカから帰国後、日本ツアー3戦目となるマイナビABC選手権に出場します。2008年、高校生だった当時、プロとしてのツアー初優勝を飾った大会です。
さて、一向に調子が上向かない石川に対しメディアからは「身体の故障」や「イップス」など様々な声が聞かれます。
しかしスウィングを見て本人と話した限りでは、そのような事が不調の原因ではありませんでした。
本人は「ドライバーで(悪い)癖が出てしまうんです」と現状を分析しています。
たしかに、練習場ではドライバーも含め調子の悪さは感じないのですが、コースに出ると長めのクラブのコントロールに苦戦をしています。
石川が「癖」と言っているのはインパクトで手元が浮いてしまう動きです。これは振り遅れによるもので、長いクラブでヘッドが戻りきらずフェースが開いたままインパクトを迎え、プッシュアウトのミスになります。
技術力の高いプロほどダウンスウィング中にそれを嫌がり、アジャストしようと手でヘッドを返す動きが入り引っ掛けも出てしまいます。長い番手で左右のミスが出る石川はこの状態にあります。
「手元が浮く要因は股関節の使い方にあると思うんです。僕は股関節の使い方が下手。”股関節が入る”とか”股関節に乗る”という表現をよく聞きますが、そういった感覚がないんです」(石川)
石川のように積極的に体重を左右に移動する選手は、ダウンスウィングで目標方向に下半身が流れることでクラブが降り遅れ、前傾角が伸び上がってしまいがちです。しかし9月に行われた入れ替え戦前くらいまでは腰がしっかり回ることで左サイドに壁が作られ、目標方向に下半身が流れて前傾角が伸び上がる動きはありませんでした。
石川は今シーズンの初めにこの手元が浮く癖を修正するべく、持ち球をドローからフェードに変えるスウィング改造に着手しました。フェードを打つためには腰をしっかりと回す必要があります。しかし、毎週試合が行われるシーズン中に改造を行ったことで、フェードを打つ動きを完全に体にしみこませることはできませんでした。結果、試合中、とくに重要な場面で、改造前の下半身の動きが出てしまっているのです。
技術的なハードルは意外に低い
振り遅れを直すのはそれほど難しい作業ではありません。適切な修正方法を用いれば石川ほどのセンスの持ち主ならそれほど時間がかからずに良い状態になると思います。現状、本人は「股関節の使い方が下手」という表現を使っていますが、私はそのようには思いません。股関節を使えないプレーヤーは、以前の石川のようにバランスを保ちながらダイナミックな動きを支えることはできないからです。
恐らく、試行錯誤を重ねる中で、適切な動きのイメージがつかめなくなってしまったのかもしれません。現状は試合に出る中で「ドライバーの調子が悪いので、飛ぶスプーンを使ってそれを補う」と言います。
そういった取り組みで、直近の試合でよいスコアを出すという結果を求めながら、先々を見据えたスウィングの根幹部分の修正をするのは容易なことでありません。しかしシーズンオフも近いことから、時間をかけた取り組みをするには絶好の時期です。方向性を決め現状分析をしてプランニングをすれば、来シーズンの活躍が期待できるでしょう。
写真/大澤進二、岡沢裕行