プロからアマチュアまで数々のゴルファーを指導してきた飛距離アップのスペシャリスト・吉田一尊。その飛ばしの理論を凝縮させた書籍「セカンドショットは、ウェッジで。」から、飛ばしに対する意識を180度変える考え方を紹介しよう。

あなたが飛ばない理由。それは「右軸スウィング」

「左軸スウィング」こそが「正しいスウィング」これこそ、僕がみなさんにお伝えしたいテーマです。そこで、一般によく言われる「中心軸」と、アマチュアの間違ったスウィングに多い「右軸」と対比させて考えてみましょう。

まずは、もっとも一般的な「中心軸」のスウィングから考えたいと思います。

背骨の軸、あるいは頭のてっぺんから地面に向けた1本の線を軸にしてスウィングするーーそう教わったり、読んだりした人は多いかと思いますが、僕はこれが正しいとは思いません。

なぜか。それを考えるには、まず「軸」とはなにかを考えることからスタートするべきだと思います。

「軸」という単語を辞書的にとらえると、それは「回転の中心となる棒」となります。自転車の車軸や、コマの中心にある棒などをイメージすると、よくわかると思います。

次に、人間の体の中に「軸」はあるのかどうかを考えてみましょう。軸とは回転の中心となる棒のこと。しかし、人間の体に回転の中心に足りうるような「棒」はついていません。つまり、よく言われる「スウィング軸」とは、あくまでイメージ上のもので、実際には存在しないことがわかります。

ただ、人間の体に棒はついていなくても、「棒っぽいもの」はついています。

それは、両脚です。

画像: スウィングの軸になるのは「背骨」ではなく「両脚」

スウィングの軸になるのは「背骨」ではなく「両脚」

こういうと、「背骨」も広い意味での「棒っぽいもの」ではないかと思われる人もいるかもしれません。事実、中心軸スウィングを勧める理論の多くは、背骨を中心に体を回しましょうと説いています。

これは、人体の構造的に間違っています。背骨は多数のジョイント(腰椎、胸椎、頸椎)の集合体によって成り立つもの。1本の棒ではなく、「だるま落とし」のように、あくまで積み重なった状態で存在するものなんです。

そこを中心としてとらえると、スウィングしたときに背骨を構成するひとつひとつのパーツが微妙にズレたり、回ったりしてしまい、下半身のエネルギーを体幹部分に100%伝えることができなくなってしまいます。背骨を「1本の軸」ととらえる考え方は、一見正しいようでいて、実は極めて不安定な、砂上の楼閣のような考え方。

それに対し、「右軸」「左軸」はどうでしょうか。人間は二足歩行する生き物ですから、右脚と左脚はほとんどの場合、接地しています。現実に存在し、なおかつ地面に着いている棒状のもの。それが脚です。そこを軸としてイメージしたほうが、スウィングは確実に安定します。

では、なぜ「右軸」ではいけないのでしょうか。右脚はしっかりと接地していますから、「中心軸」よりも、軸本来の役割は果たせるはずです。

これは、頭で考えるよりも実際に「右軸」と「左軸」を体験してもらうのが一番手っ取り早い方法です。この本を持ったままで構いません。その場で立ち上がり、両足を肩幅に開いて直立してみてください。ちょっと、簡単な実験を行ってみましょう。

準備はできましたか? やることは極めて簡単。右足、左足、それぞれ1本足で立ち、その場でゴルフのスウィングのように、体を回す。それだけです。

左足1本で立って、体を左右に回したときの体の動きと、右足1本で立って体を回したときの体の動きは大きく違います。中でも決定的に違う点。それは、右足1本で立ったときの、体を左に回す動きです。

体を左に回す動き。それは、ゴルフのスウィングではダウンスウィングに相当する動きです。このとき、右足1本で立った場合だと、体を左に回したとき、左脚が普段ボールを置く位置から離れていってしまいます。この現象を実際のスウィングに置き換えると、「クラブがボールに届かなくなる」ということになります。クラブがボールに届かなくなると、体の回転だけで打つということが不可能になってしまいます。

画像: 右足1本(右軸)と、左足1本(左軸)で立った場合、それぞれ体の回転がどう変わるか、感じてみよう。右軸では体を左に回したときに腰が引け、体が開くのがわかるはず。左軸で振る理由のひとつはここにある

右足1本(右軸)と、左足1本(左軸)で立った場合、それぞれ体の回転がどう変わるか、感じてみよう。右軸では体を左に回したときに腰が引け、体が開くのがわかるはず。左軸で振る理由のひとつはここにある

それでも、肩を突っ込ませたり、ひざを曲げたり、前傾角度を深くしたり、腕を伸ばしたりすれば、クラブをボールに当てることは可能です。しかし、それでは飛ばせません。

軸とは、回転の中心のことです。別の言い方をすれば、「軸を中心に、軸の反対側が動く」のが回転運動なんです。右脚を軸としたスウィングをすると、右脚が回転の中心なわけですから、その反対側の、体の左サイドが動くことになります。現実のゴルフスウィングでは、右脚軸で構えてバックスウィングを行うと、右股関節の位置は変わらず、左の股関節が体の前(正面方向)に出てきます。

ちょっと立ち上がって試してみてもらいたいのですが、上半身を前傾させた状態で、左股関節が前に出ると、それにつられて重い頭も前に出て、前方につんのめって倒れそうになるのがわかると思います。でも、人間というのは大したもので、右脚軸で構えたからといってバックスウィングで前にバタッと倒れる人はいません。無意識に、体を起こすことでバランスをとります。つまり、バックスウィング中に前傾角度を崩し、伸び上がることでバランスをとろうとするのです。

そして、ダウンスウィングではバックスウィングで前に出た左股関節が、逆方向に動き、アドレスで右股関節があった横に動きます。要するに、「腰が引ける」という動きです。体重は完全に右に乗っかってしまっています。

そうすると、体の回転だけではクラブをボールに当てることができません。そのため、腕を上から下に引き下ろし、ボールに当てにいくしかなくなってしまうのです。左股関節が後ろに下がり、腕を上から下に引き下ろす。このスウィングでは、基本的にはアウトサイドインにしか振れませんから、真っすぐには飛ばせませんし、飛距離も出ません。アマチュアの方の中には、右肩を下げたり、手首の特殊な動きを使ったり、ものすごい努力をしてなんとか右軸でも真っすぐ飛ばす人がいます。しかし、確率は低いし、断言しますが飛びません。

さて、いったい僕はなぜこんなに長々と右軸スウィングの弊害を述べてきたのでしょうか。それは、ものすごく多くのアマチュアゴルファーが、この「右軸スウィング」のせいで飛距離を損していることを知っているからです。

「俺は全然、右軸なんてイメージしてないから関係ないや」と思ってはいけません。多くのアマチュアの人は、軸のイメージを持っていません。その結果、多くの人が望むと望まざるにかかわらず、右軸に「なってしまう」のです。

では、なぜ右軸になってしまうのか。アドレスの段階ですでに右軸になっている場合もありますが、多くの場合は始動の仕方に問題があります。多くの人は、バックスウィングを中心ではなく末端からはじめてしまう。スウィングの末端、すなわち腕やクラブヘッドを先に動かしてしまっています。

腕やクラブヘッドを動かすと、動かした分だけ慣性という目には見えない力が働きます。そして、慣性はクラブが動く方向、つまり体の右サイドに向けて動きますから、それにつられて軸が右に移ってしまうというわけです。そして、その結果起こることは先に述べたとおりです。

右軸スウィングについて随分長く語ってきました。最後に、その最大の問題点をお話ししておきます。ひとことでいえば、「右軸スウィングでは絶対に上手くなれないし、飛ばない」ということです。

画像: 右軸で振ると、バックスウィングで左股関節が前に出て、ダウンはその反動で後ろに引ける。要は「腰の引けた」インパクトになってしまう

右軸で振ると、バックスウィングで左股関節が前に出て、ダウンはその反動で後ろに引ける。要は「腰の引けた」インパクトになってしまう

たとえば、ダウンスウィングで肩が突っ込むというクセに悩んでいるとします。片足1本立ちで体を回す例で説明しましたが、ダウンで右肩が突っ込んでしまう、それは「右軸スウィング」だからです。しかし、多くの人はそこに気がつかず「どうやったら右肩の突っ込みを抑えられるだろう」と悩み、ああでもない、こうでもないと練習場で試行錯誤することでしょう。

しかし、原因はあくまで「右軸スウィング」にあります。そこを直さずして、「右肩の突っ込み」は絶対に直らない。これは、1万球打っても根本的な解決は得られません。いわば、全力で上達から遠回りしている状態になってしまうんです。

写真/小林司、中居中也、増田保雄

吉田一尊(よしだ・かずたか)著書:「セカンドショットは、ウェッジで。」(ゴルフダイジェスト社)より※刊行当時の名前の表記は吉田一誉

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