2015年に腎臓がんを発症しながらも、それを乗り越えて韓国ツアーに復帰。2017年からは日本ツアーに参戦するイ・ミニョン(24歳)。ツアールーキーながら2勝を挙げ、獲得賞金は一億円を超えて賞金ランク3位(11月22日現在)と賞金女王を狙える位置につけている。彼女の強さの秘密を探った。

優勝争いの中で「いつもと同じ」

今季2勝目を挙げた「ニッポンハムレディス」でキャディを務めたプロキャディの中川佳輔さんに話を聞いた。

「今季2回目に担がせてもらった7月の『ニッポンハムレディス』で優勝しましたが、優勝争いの中でもまったく動じないというか、普段と変わらないんです。この週は初日から(スコア)66、2日目に64でトータル14アンダーとスコアを伸ばし、最終日は2位と5打差の首位からスタートしましたが、(首位で迎えた最終日でも)スウィングも歩くのもいつもと同じテンポ、攻め方もまったく変わりませんでした」(中川)

画像: 持ち球のフェードはピン位置によって曲がり幅をコントロールできるほどの精度を誇る

持ち球のフェードはピン位置によって曲がり幅をコントロールできるほどの精度を誇る

たしかに実際に試合を見ていても、もともとショットの技術が高いので大きなミスは少なく、淡々とプレーしている印象だ。バーディパットを外した悔しい時でさえ笑顔が垣間見える。

がんと宣告され、それを乗り越えた彼女の精神力は優勝争いのプレッシャーに押しつぶされることはないのかもしれない。ミニョンの強さを、プロゴルファー・中村修は次のように語る。

「彼女のプレーを見ていると、どんなことでも受け入れる準備ができているように見えます。入れれば優勝に手が届きそうなパットを外したときでも、これがゴルフなんだと受け入れる心の準備ができているからこそ、もし外しても動じないでいられるのではないでしょうか。そして次のホールでバーディを狙えばいいんだと切り替えられるところに強さがあるように思います」

フェードの曲がり幅をコントロールできるショット力

ゴルフはメンタルが非常に大事なスポーツだが、メンタル面の強さだけで賞金女王になれるわけでもない。ミニョンの強さのもうひとつの秘密は、そのショット力にある。

「ミニョンさんの球筋はフェードですが、飛距離も十分出ますし、ショットも正確です。フェードの曲がり幅をコントロールできる技術があるので、ピンが右サイドに切ってあればフェードで狙いますが、左サイドに切ってあるピンを狙うときなどはほぼストレートな球筋で打ちます」(中川)

最終戦までのスタッツを見てみるとパーオン率は約73.92%で1位、飛距離は245.58Yで12位と抜群のショット力を発揮していることがわかる。

画像: パットさえハマればいつでも優勝争いに絡んでくる安定感がある

パットさえハマればいつでも優勝争いに絡んでくる安定感がある

「何度も試合会場で見ていますが、フェード系の球筋以外は見たことがありません。もちろん、ドローも打とうと思うと打てるはず。でも“打たない”んだと思います。パーオン率が高いのは、フェードの精度で勝負する自分のゴルフが正確に見えていて、それに合わせたマネジメントができているということでしょう。大事なところでパットをミスしているので、それが入るようになったらかなり手ごわい存在になるのでは」(中村)

残るは最終戦の「ツアーチャンピオンシップリコーカップ」。賞金女王をつかむには、優勝した上で鈴木愛が単独15位より下の順位である必要があるなど、条件は厳しい。しかし、仮に今季の賞金女王争いに敗れたとしても、来季も活躍は間違いなさそうだ。

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