2017年のカシオワールドオープンで2週連続の予選通過を決め、復活の兆しを見せている石川遼。そんな石川が、世界のトップレベルで輝くための方法を、統計学的データ分析の見地からゴルフを紐解く理論家、ゴウ・タナカが、データと科学を駆使して考えた。

スウィング改造は決して悪い選択肢ではない

今回は、データ分析家の立場から、石川遼選手が復活するために何が必要かを考えたいと思います。

ゴルフファンならご存知の通り、石川選手の特徴は、スウィング改造を頻繁に行うことにあります。スウィング改造をする際に必要なのは、向かう先、ゴールがあること。統計的データの観点からすると、1日ではもちろん、1週間のパフォーマンスをすべて集めてもデータとしては不十分。最低でも1年間はデータを取り続けないと、優位性を測ることはできません。

ポイントは、スウィング改造は決して悪い選択肢ではないということです。スウィングの比重は、ゴルフにおいてやはりもっとも大きく、良いスウィングメカニズムなしでは超一流になることはほぼ不可能と、データも示しています。

画像: スウィング改造は決して悪いことではない。大切なのは「ゴール」の設定だ

スウィング改造は決して悪いことではない。大切なのは「ゴール」の設定だ

石川選手はスウィングへの意識が非常に高いプレーヤー。スウィングに自信を持つことが、復活への近道となるはずです。では、石川選手のスウィングに欠けているピースは何なのか? 統計データと科学が示す1番大きな問題は、インパクトの瞬間にあります。

私が“超一流選手”と定義する、世界ランク30位以内を5年以上継続している選手を対象に、アドレス、始動、バックスウィング、トップ……とそのスウィングを細分化し、全員に共通する点がないかを調べてみると、たったひとつだけ、共通点があることがわかります。それが、インパクトの瞬間をターゲット後方から見た際、腕とシャフトが作る角度にあります。

画像: 石川と世界の“超一流”との違いが、腕とシャフトの作る角度にあるとタナカは分析する

石川と世界の“超一流”との違いが、腕とシャフトの作る角度にあるとタナカは分析する

結論を言えば、超一流選手たちは95%の確率で、その角度が160度以内に収まっているんです。私はこれを「R(ルール)160」と称しています。石川選手のスウィングは、この「R160」を満たしていません。

以上を踏まえ、私が統計学的見地から勧めたい、復活への道筋はふたつ。 ひとつはR160を満たすインパクトを作るため、時間をかけてスウィング改造をすることです。

スウィングを変えることは容易ではなく、はっきりと見てわかるレベルでスウィング改造をしたプロは、近年ではルーク・ドナルド、ジャスティン・ローズ、リッキー・ファウラー、タイガー・ウッズくらいでしょうか。

スウィングを少し変えるだけで感覚的変化はかなり大きく、マトモに当てることすら難しくなります。そのため、スウィング改造はハイリスク・ハイリターン。それでも、見返りが大きいのも事実です。

画像: 5戦連続の予選落ちのあと「ダンロップフェニックス」で決勝ラウンドへ進出し27位タイでフィニッシュ。続くカシオワールドオープンでも見事に予選を通過した

5戦連続の予選落ちのあと「ダンロップフェニックス」で決勝ラウンドへ進出し27位タイでフィニッシュ。続くカシオワールドオープンでも見事に予選を通過した

もうひとつは、今のスウィングを受け入れて、そのスウィングの傾向にあった練習をし、ミスの限定を測ること。そして、それをベースにコースマネージメントをすること。自身のスタッツ(部門別成績)をよく見て、長所・短所をしっかりと把握し、スウィングの追求よりも、ゴルフのスコアメーキングの鍵となる部分を強化する。この方法はリスクが少なく、確実な進歩が見込めるものの、石川選手が理想とするレベルに達するかどうかは分からないのが難点。

統計学データ分析の見地から、石川選手の復活へ“提言”をさせてもらいましたが、いちゴルフファンとしても、彼の復活を願わずにはいられませんし、彼の強靭な精神力で正しい道のりを歩めば、間違いなく復活できると思います。15歳でプロツアーで勝ち、18歳で史上最年少賞金王に輝いた彼はまぎれもない天才。2度目の成功を、楽しみに待ちたいと思います。

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