昔、あるプロゴルファーから聞いた話。
「アマチュアの方は、バンカー越えのアプローチ=サンドウェッジと思っていますよね。プロならわかるけど、サンドを持つとミスしてバンカーに入る危険性が増す。そうしたらダボ以上が確定するわけですから、球をとらえやすいアプローチウェッジで打ったほうがいい結果になりますよ」
バンカー越えのアプローチはラフからのアプローチになる場合が多く、ロフトが56度や58度と寝ているサンドウェッジで打つとボールの下をくぐるダルマ落としになったり、手前を叩くザックリになる危険性があるのはたしかにわかる。しかし、そうはいってもバンカー越えでロフト52度前後のアプローチウェッジを使うのはなかなかイメージが湧かないが……。実際はどうなのか、実験してみた。
テスターはみんなのゴルフダイジェスト編集部員のプロゴルファー・中村修と、「100を切れば嬉しい」ゴルファーで、どちらかといえば転がすより上げるアプローチが好きという典型的アベレージゴルファー・編集部F。アクアラインGCに協力を仰ぎ、バンカー越えまで10ヤード、バンカーからピンまで10ヤードの状況で、プロとアマがAWとSWを10球ずつ打った。
まずはサンドウェッジから。こんな結果となった。
プロはほとんどワンピン以内に寄せ、約ワングリップに寄ったボールも2球あった。一方で、アマチュアは苦戦。ザックリ、オーバーなど明らかなミスが7回あるという状況だった。
「1球打ち損じてしまいましたが、プロにとってこの状況はバンカーがないのと同じ。ラフからなので距離を合わせるのがやや難しいですが、とくに問題なく寄せることができました」(プロ)
「ダメでしたね……バンカー越えなのでボールを上げようと意識しすぎたのか、バンカーに2回入れ、1回ザックリし、2回大オーバーしました。いかに普段バンカー越えから寄せられていないかを痛感した次第です」(アマ)
つづいて、アプローチウェッジで10球打った結果を見てみよう。驚きの結果が出ていることがわかるはずだ。
一言で結果を解説すれば、「アマチュアは寄ったが、プロは寄らなかった」となる。アマチュアの場合、明らかなミスが顕著に減り、平均で1メートル近く寄せられている。うち1回はオッケーに寄せてさえいる。一方で、プロの場合はサンドのほうが平均的に寄せられた。いったい何が起きたのか? プロゴルファー・中村が分析する。
「私の場合、普段イメージする落とし所よりも手前に落とし所をイメージする必要があり、かえって難易度が増したという印象です。一方で、アマチュアにとってはサンドよりアプローチウェッジのほうがミスの確率は大幅に下がることが結果につながっていました」
つまり、アマチュアが「寄せる」のではなく「乗せる」だけならアプローチウェッジのほうに軍配が上がったというカタチだ。しかも、今回のケースではアプローチウェッジのほうが寄ってもいる。通常のアプローチならわかるが、バンカー越えでもそうだったのが興味深い。
「バンカー越えというと即サンドウェッジを持っていました。今回の実験の状況も、見た目にはバンカーを超えてすぐにピンが切ってあるように思えるのですが、実際はバンカーを超えてからピンまで10ヤードあって、冷静に考えれば普通のピッチ&ランで寄せられるんですよね(笑)。いかに自分がバンカーを過剰に恐れていたかがよくわかりました」(編集部F)
思ったよりも結果が良かった「バンカー越えでのアプローチウェッジ」。先入観を捨て、一度試してみては?