アメリカで身につけたレッドベター流スウィング
今季、自身はじめて賞金ランク一桁台に入った今平は、松山英樹と同じ25歳(学年は松山が1つ上)。その松山とは学生時代に日本ジュニアゴルフ選手権で顔を合わせており、今平は松山を退けて優勝しています。
日本ジュニアのような全国規模の大きな大会で優勝すると、普通なら高校を卒業してプロになるか国内の大学の強豪ゴルフ部に入部することが多いのですが、今平は高校を中退しアメリカに活動の拠点を移します。
このような珍しい経歴から上昇志向が強くガツガツとしたタイプだと思っていたのですが、直接話を聞くとかなりマイペースで穏やかな性格の選手でした。
「PGAツアーに憧れてアメリカに興味を持ちました。高いレベルと良い練習環境の中でゴルフに取り組みたいという気持ちがあり、自分で決めて渡米しました」(今平)
アメリカではかつて宮里美香も所属したIMGアカデミーに入り、技術面を磨いたそうです。IMGアカデミーではデビッド・レッドベターに師事したデーブ・ウィリアムスというコーチに指導を受けていました。ポーラ・クリーマーなども指導したことのある人物です。
「スウィング中は手首の角度を意識しています」と語る今平の、アップライトにクラブを上げるテークバック、コッキングを入れてクラブの運動量を多くするスウィングを見たときに、レッドベター系のコーチの影響を受けているのではないかと思っていましたが、その通りでした。
レッドベターのスウィング理論のキモは、腕と体の同調性にあります。バックスウィングで早めにコックを入れることで、クラブはフラットになりにくく、体の正面に腕をキープしやすくなります。そして、腕と体の同調性が高ければ高いほど、長いクラブの正確性や再現性が高まるというメリットがあります。
身長165センチと小柄な今平は、ドライバーの平均飛距離が約288ヤードと飛距離で勝負するタイプの選手ではありません。彼の最大の武器はアイアンショットの精度です。とくにロングアイアンの球筋と精度には目を見張るものがあります。
ドライバーの平均飛距離はツアー全体で31位ですが、パーオン率は70%を超えて堂々の2位。ティショットで長い距離を残したとしても、そのあとのセカンドショットでグリーンを的確に狙ってスコアメイクをしているのです。
今平と同じく、この長い番手のアイアンショットの精度が高いのが松山です。PGAツアーのコーチたちに話を聞いても、とくに200ヤード前後の距離からのショットの精度はツアー随一という評価です。
PGAツアーでは”500ヤードのパー4”というモンスターホールがしばし登場します。そういった場面でパーをセーブし、ときにバーディーを獲るためには、やはりセカンドショットの精度が重要。ドライバーで290ヤード打ったとしても210ヤードも残るわけですから、そこでグリーンをとらえられるか否かが欧米のトーナメントでの成績に直結する事になります。
その点アイアンショットを得意とする今平の海外ツアーの適応度は高いと言えるでしょう。ドライバーの平均飛距離をもう10ヤード出す事ができれば、松山のようにPGAツアーでもコンスタントに上位に食い込める素質はあると思います。
「ゲームや読書が好き」というインドアタイプの今平。感情を大きく表に出すタイプではないですが、自身の中にはしっかりと考えを持っている”イマドキの選手”という印象を受けました。アマチュア時代にビッグタイトルを獲得した後、それに満足せず環境を変えるあたり、ストイックさを感じます。
このようにストイックさとマイペースさを兼ね備えた選手は、環境が変わっても安定的な成績を残せる可能性が高いと思います。今後、海外での経験も増やしていければ、日本を代表する選手になる日も遠くはないかもしれません。