国内2017年シーズンの賞金王は宮里優作、女王は鈴木愛で幕を閉じた。果たしてこの2人はR160の条件を満たしているのだろうか。超一流になるため、長く活躍をするためには必要条件とされているR160の観点から2017年の賞金王と賞金女王をみてみた。

R160メソッドから見た 2017年日本の賞金王と女王

「世界ランク30位以内を5年継続した選手」を超一流と定義した場合、彼らにはひとつの共通点が見出せる。それは、インパクトの瞬間に腕とシャフトにより作り出される角度。腕とシャフトが一直線のときを180度と考えた場合、超一流はその角度が160度以内で、それを私は「R(ルール)160」と呼んでいる。タイガー・ウッズも、松山英樹も、このルール160を満たしている。

画像: タイガー(左)も、松山(右)も、インパクトの瞬間にシャフトと左腕が作る角度は160度以内。つまり、手元が浮いていない

タイガー(左)も、松山(右)も、インパクトの瞬間にシャフトと左腕が作る角度は160度以内。つまり、手元が浮いていない

R160の基本的な事実として、R160と賞金ランキングとの相関は女子よりも男子に強く見られる。その理由は男子と女子では打つ必要のある飛距離が違うからである。300ヤード先にコントロールするのと240ヤードでは、300ヤード打たなければならないほうに、より多く「理」が求められる。

言い換えると240ヤードなら多少の理でごまかせるが、300ヤードの世界ではそれは通じないのだ。たとえば男子ツアーがドライバーを禁止し、3番アイアンまでしか使えないとしたら、世界ランキングは現時点と異なるものになり、スウィングにはもっと多様性が認められただろう。

今回の賞金王と女王のスウィングをR160の観点から比較してみる。厳しい言い方がでてきてしまうかもしれないが、データ分析から言えることを正直に書いていく。R160だけの観点だけで見ると鈴木愛選手は満たしていて、宮里優作選手は満たしていない。

日本女子ツアーで戦うにおいてR160を満たすことは優位ではあるが男子で求められるほどでもない。ただ世界のトップで長く戦い結果を出す女子プレーヤーは基本的にR160を満たしている率が高いため、やはり満たしているにこしたことはない。

画像: 2017年賞金女王の鈴木愛(写真左)と賞金王の宮里優作(写真右)

2017年賞金女王の鈴木愛(写真左)と賞金王の宮里優作(写真右)

一方の宮里優作選手はR160を満たしていないわけだが、不思議に思われた方もいるだろう。R160は超一流プレイヤーと一流プレーヤーとの差を出した統計の結果である。石川遼選手もR160を満たしていない。

とはいえ、過去に日本人プレーヤーで海外を主戦場にし、かつ世界ランキングトップ30位以内を5年以上続けた選手(統計的データ分析時に用いた超一流の条件)はおらず、松山選手がおそらくそれを成し遂げる最初の日本人プレーヤーになるだろう。それくらい“超一流”は狭き門だと言える。

そして松山選手はR160を満たしている。R160を満たしていない石川遼選手は、日本で賞金王となって米ツアーに挑戦するも、シード権を失っている。日本ツアーのレベルはPGAツアーに対してまだまだ高くはないのが現実で、日本の賞金王をとるということは世界レベルから見たら一流への入り口と言える。

ただR160を満たしていないトップ選手も存在する。その代表が、元世界1位のジェイソン・デイ。彼の特徴といえばツアー屈指の飛距離。デイのイーグル率は米ツアーNO.1だ。

画像: R160を満たしてはいないが、超一流の域で活躍するジェイソン・デイ

R160を満たしてはいないが、超一流の域で活躍するジェイソン・デイ

日本を制した宮里優作選手がこれから目指すはPGAツアーやメジャーなど、世界の舞台だろう。石川遼選手が若さ、天性、勢いで挑戦し、くしくもシードを失い2018年は日本を主戦場とする。宮里選手は同じく恵まれた天性の才を持ち、そして石川選手が持たなかった経験を武器に勝負することになる。

今年、宮里選手はパー5でのバーディ率を大きく向上させている。ただ、パー5のスコアリングはアメリカの距離設定の影響でそう上手くはいかないだろう。3打目勝負を余儀なくされることが増え、100ヤード前後のスコアリングショットの徹底は必須だ。過去最高と言っていいパッティングアベレージを今年は記録したわけだが、そのレベルをそのままキープすることも大事になってくる。

自分の武器を磨き続ければ、デイのようにR160を満たさないまま、世界のトップになることは理論的には可能。日本の賞金王の更なる飛躍に期待したい。

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